第2節 マスグレイブ家族大集合!

41 お呼びですよ、英雄さん

 ファースたちと出会って数日後。


 朝起きると、私のところに、2人の人物からの呼び出しが来ていた。


 セキュリティの甘く、科学技術が発展してないこの世界に、携帯や電話みたいな便利な機械や、郵便なんて便利なシステムがあるはずもない。

 だったらどうやって、連絡を取っているのか、というとずばり魔法である。生活魔法は万能と言っても過言じゃないのだ! 生活魔法、万歳!


 だから、私も含め、この世界の人たちめはかなり生活魔法に頼っている。依存しているといってもいい。まあ、前世、科学の力に頼っていた私が言えたことではないんだけど。

 連絡するには、連絡精霊アンゲロスという簡易精霊を呼び出す、精霊召喚魔法を使う。


 伝えたいことを連絡精霊アンゲロスに伝言し、それが伝えたい相手に届き、伝言を聞いたら勝手に消滅する仕組みだ。

 だがやはり、安全性にはかけており、自分よりレベルの低い者が召喚した連絡精霊アンゲロスは意図的に消滅させることができる。つまり、私はどんな人の連絡精霊アンゲロスも消滅させることができるのだ。


 この世界の変なところでの実力主義。

 弱いのが悪いと言わんばかりの実力主義。

 私としてはありがたいけど、ちょっと可哀想になってくるよねぇ……。


 まあ、私に連絡精霊アンゲロスを送ってくる人たちはそんなにレベルが低くないので、なんの心配もないけど。


 今回、私に用があるのは、ロワイエさんとデジレである。

 簡単に言うと、どっちも本日中に顔を出せ、ということであった。

 ロワイエさんの方は心当たりがあるが、デジレに呼び出されるなんて、想像もしてなかった。なんのようなんだろう。


 あいつ、あんなことがあったのに私を呼び出すなんて、ほんと図太いよなぁ。なんとも可愛げがない。もっと可愛げがあればなぁ。

 さっさと私専門の情報屋作ろ、と、決意する私であった。


 はあ、今日はそこそこ忙しくなるなぁ。

 まず、デジレのところに行ってから、ロワイエさんのところに行こう。

 そう決めた私は、家を出る準備をさっさとする。


 まず、クローゼットからそこそこまともな服を選び、パジャマを脱ぎ捨て、その服を着る。次に、生活魔法で、寝癖を直したり、顔を洗ったりする。

 これで身支度は完成! 3分もかかりません。


 台所に行き、パンを魔法で焼き、その辺にあるジャムを塗って口に放り込む。

 これ、賞味期限とか大丈夫かなぁ? 切れてても気にしないけど。腹を壊さなければいいのだ。


 足の踏み場もないのに、まともに座れる場所などあるはずもなく、台所で立ち食いをする。

 パンを焼くことに関しては、もう私はプロである。それしかできないので、朝ご飯はパンもしくは、買い置きの何か。料理と言われるものは一切しない。


 ……残念な女子だ。自分でも分かっているので、大丈夫!(何が?)

 そもそも、女子だからと言って、料理やら、掃除やらができるものではないし、それをやらなくても生きていけるので、なんの問題もない。ないと、私は信じたい。信じている。


『そもそも女子以前の前に、人として終わってる気がするんだけど』と、ゼノビィアの声が聞こえてきそうだが、それはゼノビィアの意見である。私は気にしない!


 ちなみに昼食は、外食か買ったお弁当で、夕飯は決まってアデルフェーだ。一応、説明しておく。

 お金なら、かなり稼いでるので心配はいらない。むしろ、何に使えばいいのか悩み中。前世の私では考えられない、この悩み。


 でかい家は、私には広すぎるし、掃除とかするために人を雇うのはなんか、嫌だ。自分の家に知らない誰かを入れたくないし。

 武器はクラウソラスがあれば十分だし、それにアイテムボックスにもいくつか入っている。服とかアクセサリーとか、雑貨とから微塵も興味がない。



 ……やばい、女子として終わってる気がする。



 そもそもだ。この世界は娯楽が少なすぎるのだ。漫画もゲームもアニメもないなんて、終わってる! 小説はあるけど、挿絵ついてないし。


 だからと言って、お金を稼ぐことはやめられない。これは、この世界での数少ない私の趣味と言えるのだから。

 焼いた分のパンを食べ終えたので、私は家を出た。


 そういえば、ファースたちとは、会ってないなぁ。まあ、王族と騎士団長だし、忙しいよね。ファースとグリーは学園に通っている筈だ。

 学園、か。私も本当なら通ってる年だよな。まあ、もう通うことはないだろう。自由な時間が増えて、嬉しいが、やっぱり行きたい、という気持ちがあるのは事実だ。学園もそれなりに楽しい。


 昔のことを振り返っても仕方がない。

 さっさと用事を済ませちゃおう。

 デジレはどうせ、いつものところにいるよね。


 そうして私は、踊る戦乙女ヴァルキリーとして、今日も街に出かけた。


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