1 ルシールの生き様
唐突だが、この世界には魔法というものが存在する。国や地域によって、分類の仕方は様々だ。生活魔法、物理魔法、特殊魔法、幻想魔法、聖魔法、闇魔法などなど。誰でも使える魔法が、生活魔法であり、逆に、聖魔法や闇魔法は、使える人が限られている。
この貴族の国・マカリオスでは10歳になると、王族貴族平民問わず、生活魔法以外の魔法が使える者は、魔法学園に通うことになる。クラス分けは贔屓なしの実力一本。故に王族貴族平民関係なくクラスが一緒なわけだ。
『私』ルシール・ネルソンは、魔法学園に入るまではかなり好き勝手やっていた。流石は公爵令嬢。やりたい放題でも、何も言われない。
両親と歳の離れた兄に甘やかされて育ち、大変な我儘娘に成長した。
6歳の頃に会った第一王子に一目惚れし、父に、
『お父様〜、ブライアン様と婚約がしたいの〜(上目遣い)』
『婚約できなかったらお父様のこと嫌いになるからねっ!(ぷんぷん)』
などと頼み込み、あらゆる権力を駆使して、第一王子・ブライアン・ニュージェントの婚約者となった。
……それでいいのか、ネルソン公爵。
当然のことながら、ブライアンは私のことは好いておらず、隙あらば婚約を破棄しようとしていたらしい(流石だ)。それができなかったのは、公爵家との繋がりを無下にはできないから。嗚呼、可哀想に、ブライアン。流石に同情するわ。
まあ、私にとって悲劇、ブライアンにとって奇跡の舞台は魔法学園だった。
蝶よ花よで育てられてきた私だが、出来損ないではなかった。幻想魔法……別称・精神魔法だけはかなり扱えた。
ブライアンも優秀だったので、私たちは晴れて(?)同じトップクラスに在籍していた。
もう、これは仕方のないことなのだろう。国中の優れた魔法の使い手が集まる中、特に異彩な才能を持つものがいた。
伯爵令嬢・ミリッツェア・アントネッティだ。彼女は使い手の少ない、聖魔法が使え、それでいて綺麗な顔立ちをしていて、極め付けに性格も良かった。パーフェクト!
我儘令嬢、ルシール・ネルソンに振り回されてきたブライアンにとって、彼女は天使……もしかしたら女神にすら見えたのかもしれない。恋に落ちるのは最早予定調和であろう。
そのことを認められなかった私は、嫉妬し、幻想魔法を使って彼女のことをこれでもかってくらい虐めた。流石だ。最早尊敬の域だ。犯罪になるものもいくつかあったはずだ。やばいなぁ、
そんなことがブライアンにばれ、私は彼に婚約破棄を言い渡されてしまう。当然である。
彼にはやっと真っ当な理由ができたのだ。婚約破棄するに決まってるじゃん! 私でもそうするし。
『ルシールが犯罪まがいのいじめをしていたこと』
『聖魔法の使い手、ミリッツェアに好意を持っていること』
この二つが主な理由であろう。
彼女がいくら伯爵令嬢であろうと、私が公爵令嬢であろうと、聖魔法の魅力は絶大である。王家の血筋に聖魔法の使い手を、と思うのは極々自然なことだ。それにその婚約者は我儘で、おぞましいいじめをしていた令嬢だと言うのだ。
婚約破棄をするには十分すぎる。
なんで私もっとこっそりやろうとか思わなかったわけ?! 馬鹿なの?! 馬鹿だよね?!
まあ、いきなり婚約破棄だー、なんて言われて納得できるルシール・ネルソンではない。納得できてたなら、いじめなんてしないし、やったとしてもコソコソやるだろう。
納得できなかった私は、『ありえないわ! あんな小娘にブライアンを取られるなんてっ!』とさらなる犯罪に手を出そうとした。流石です。ぶれないの凄いわー。
–––––悪魔との契約。
それが私、ルシール・ネルソンのやろうとしたことである。
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