逃亡した悪役令嬢は隣国で踊る戦乙女と呼ばれています。

聖願心理

序章 私の逃亡記

プロローグ

 その場所に足を踏み入れた瞬間、私は思い出した。


 ……前世の記憶を。


 大量に入り込んでくる、記憶の数々。正直、私のキャパシティはオーバー寸前で、頭が割れそうなくらい痛かった。

 その波に耐えきり、私は次にどっと汗を吐き出す。



 ……あと数分で、人生が終わるところだった。



 こんな恐ろしい場所に片足だけでも足を入れておくなんて不吉だ。そう思った私はアホみたいに素早く足をどかす。


 危ない、危ない。


 どっどっどっと心臓の動きはどんどん活発になる。

 本当に、危なかった……。


 ふう、吐息を漏らし、はしたないけどその場に座り込む。こんな場所に誰かいるはずないし、セーフだ、セーフ。



 心拍数が落ち着いてきたので、私はこうなってしまった原因を、つまりは『私』ルシール・ネルソンの今までの生き方を振り返ることにした……。

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