屋上にて(後編)

「もうやめて! これ以上、ケンカしないで……!」

 俺たちを必死に止めようとする凜々花。

 ああ、優しいな、君は。

 けれど、はっきり言おう。


「邪魔するなよ、これは男のケンカなんだよ!」

「ああ、決着付くまで下がっててくれ、凜々花ちゃん!」


 フフ、やっぱ俺たちって「男」だな。そういう意見は一致してる、ってのは。

 さて、今度こそ――



「やめなさいって、言ってるでしょ……!」



 俺たちは、宙を舞って地面に叩きつけられた。


     *


 ケンカを止められてから五分後。

「そうなの? あなたたちが、二人とも私を好きだったって」

「ああ」

「そうだぜ」

 俺たちは、凜々花に経緯の確認をさせられていた。


「そうねえ……よくわかったわ」

 これまでの俺たちの話を聞いた凜々花は、事実を突きつけた。



「ごめんなさい」



「え」

「え」

 俺たちは、我が耳を疑った。

とは、どちらとも付き合えないわ」

「……」

 更に突き付けられた事実。

 凜々花の意思であるのはわかっていたが、それでも、バカにされたようで納得が行かなかった。



「けれど、もっと成長したら……その時は、どちらかを選ぶわ。それまでは、誰とも付き合わない。これでいいかしら?」



「!」

 凜々花の言葉に、俺たちは再び向き直る。

「ねえ、聞いているの?」

「ああ、聞いてるぜ」

「もちろんさ、凜々花ちゃん」

 俺たちの返事を満足げに聞いた凜々花は、俺たちの片手を繋ぎ、引き上げた。

「それじゃあ、保健室でケガを治してから帰りましょ、二人とも」

「ああ」

「頼むぜ」


 やれやれ。

 今日も決着は、付かなかったらしい。

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火花を刹那散らせ 有原ハリアー @BlackKnight

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