屋上にて(中編)

「まだ仕掛けないのかよ、アレン」

じゃないからな、達也」

 距離は1メートル。

 互いに手を伸ばせば、届く距離だ。

「スゥ……」

 俺はいつアレンが拳を振るってもいいように、呼吸を整える。

「ハァ……」

 アレンもまた、呼吸を整えているようだ。


「……ッ!」


 互いの呼吸が途切れたことによる、一瞬の静寂。

 それがゴングとなった。

「おらあッ!」

「はああッ!」

 互いに数歩踏み出し、ボクシングのように殴り合った。最早一歩も引いてない。

 というか、相も変わらずいいパンチ持ってんな、アレン。

 まあ、俺も負けてないけど、な!

「ぐっ……!」

「つっ……!」

 互いの顔面にクリーンヒット。互いに吹っ飛び、体をしたたか地面に打ちつける。

「やるな、アレン……!」

「お前もな、達也……!」

 よろめきながら、立ち上がる。

退く、か?……」

「退かねえよ……!」

 俺たちは、互いに拳を構え――


「やめて!」


 この澄んだ声。まさか……

「凜々花!?」

「凜々花ちゃん!?」

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