006  真田優作Ⅴ

 優作ゆうさくは、真っ青になりながら立ち上がり、すぐさま扉を開けてトイレに駆け込んだ。

 そして、数十分過ぎると、優作はおなかを抑えながらゲッソリして帰ってくる。さっきまでより体重が減ったように見える表情をしながら気力も失いかけていた。

「は、はぁ……。し、死ぬかと思った……。あれは食いものじゃない」

「頑張ったな。これでお前も一つ階段を上ったということだ。頑張れよ、これからも俺達のために……」

 敦史あつしは笑いをこらえながら必死にお腹を抑えていた。

「お前、絶対に覚えておけよ」

「まあ、まあ、まあ……。それよりも今日の部活動は一体何をするんだい?」

「先輩、今日は何をするんですか?」

「そうだね。じゃあ、ミステリー的なものでもしようよ」

 真冬まふゆは適当に頭に浮かんだものを口にした。

「ミステリーですか。ねぇ、ゆいちゃん。どう思う?」

「私はどちらでもいいわ。でも、あの男が余計な事を話さなければね……」

「おやおや、唯ちゃん。それは何の事かな?」

 睨みつけてくる唯に対して、敦史はいつも通り涼しい顔でボソッ、と言い返す。

「だとしても、一体ミステリーと言っても何をするんですか?」

 優作は、真冬に尋ねる。

「えっと、伝言ゲームみたいなそう言う形式で、一人一人がそれぞれ区切りのいい所で、相手に話をバトンタッチするの。そして、最後に落ちがしっかりと出来たら成功。出来なかったら失敗。面白そうでしょ‼」

「なるほど、リレー小説か。もしかして、アドリブはいくつも足してもいいってわけだな」

 敦史は頷きながら話を理解する。

 こういうゲームは絶対に敦史あつしみたいなやつにはやらせてはいけないものだ。特に女子のいる前、上田唯の前では絶対である。

「………………」

「ひぃっ! 落ち着いて唯ちゃん。うそうそ、何もしないから信じてよ。ああ、なんでそこまで俺を警戒するかな……」

 また、睨まれる敦史は、苦笑いをする。

「あんたが、どうしようもない事を考えているからよ」

「そんな事ないない……」

 敦史は唯から視線を逸らす。

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