第1章  真田優作

002  真田優作Ⅰ

 新学期が始まり、今日から学年が一つ上がる。二年二組の教室からはいつも通りの生徒の声が聞こえていた。

「はい。今日から新学期が始まる。お前ら後輩と先輩に挟まれる立場だからな。しっかりと高校生活を送れよ」

 学校で有名な美人教師の折原香織おりはらかおりが目の前の教卓の後ろに立っていた。折原は、美人以外にも担当科目の数学の教え方も好評版であり、時折、職員室まで数学の問題を質問に来るほど生徒たちから絶賛である。

 そんな二年二組の男子生徒は大喜びで朝から相当うるさかった。

 その中で後ろの席の窓側に座っていた真田優作さなだゆうさくは、大きな溜息をついていた。朝早くから学校に登校し、その上、現在は睡魔と戦っている最中だった。

「ね、眠ぃ……」

「どうしたの、真田君? 眠そうだけどもしかして、寝てないの?」

 隣の席に座っていた春風理恵はるかぜりえが声をかけてきた。

「い、いや……。何でもないよ、春風」

 優作は、頬を赤らめながら慌てて返事を返した。

 隣の席に座っているこの美少女は、同じ中学からの同級生であり、優作が片思いをしている相手である。

 ショートカットの美少女でおしとやかの上、誰にでも優しく。高校入学して一か月後には白雪姫というあだ名がつけられたほどだった。

「そ、そう……。それにしてもすごいよね。私たちのクラスに折原先生が来るなんて思わなかったよ」

「あ、ああ。これから一年間。このクラスの男子の数学の成績だけはトップレベルになるだろうな」

 優作はこのクラスの男子生徒たちの盛り上がりから見て、素直な意見を述べた。

「なあ、優作。折原ちゃんがクラスの担任でよかったよな。それにこのクラスの女子力のレベル高いし、俺にとっては天国のようなもんだよ。ま、そう思うだろ?」

 前の席の男子生徒が後ろを振り返って、小声でそう話しかけてきた。黒髪に少し茶髪が混じっているような頭をしており、チャラチャラしている女好きのこの男子生徒は優作の唯一の親友である小野敦史おのあつし。綺麗な少女が好きで、この学校のほとんどの美少女のデーターをインプットしているに違いない。

 この富坂とみさか高校は全校生徒七百人程度、山を開拓して、四十年前に設立された高校である。

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