属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか?
ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
001 プロローグ
春と言えば何を想像するだろうか。桜、恋、新学年、様々な事を考える人が多いだろう。電車に揺られて三十分。ようやくたどり着いた駅から自転車を漕いで約十五分。目の前の坂を上ると高校の校舎が見えてきた。
坂を上ると、桜の木から花びらが散っていた。薄暗い校舎にはぽつんと職員室の明かりだけが眩しく光っている。
「ああ、現実はクズばかりだ。現実女などロクな奴はいない」
自転車を押しながら坂を上る。
男は、息を切らせながら着慣れた学生服をボタンの最後まで付けていた。
駐輪場に自転車を置き、しんみりとしたこの空気の中、一人、靴箱のある扉まで歩き、管理人が開くのを待っていた。
空を見上げると少しずつ水色になっていく。太陽が昇ると、それは段々青くなっていくのだろう。
今日は新学年の新学期。下には後輩、上には先輩のいる高校二年生になるのだ。一人で待っていると、その後からぞろぞろと人がやってくる。電車通学の生徒たちだ。主に二・三年の生徒しかいない。
廊下の方からコツ、コツ、と音が聞こえてくる。近づくたびにその音が大きくなり、ジャラジャラ、と鍵の重なり合う音が聞こえてくるのだ。
「よお、今日は早かったんだな」
去年、同じクラスメイトだった男子生徒が話しかけてきた。
「ああ、今日は週刊少年の発売日じゃないからな。そのままこっちに来た」
「そう言えば、今週号は休みだったな。それでか……」
男子生徒は納得したように頷き、そのまま管理人が扉を開くのを待ち続けた。
端から順に扉は開いていく。男が待っている場所まで後三つはかかりそうだ。
空いた場所からは三年の生徒がぞろぞろと入っていくのを見ながらついに、その時は訪れた。鍵が開く音がし、扉がスライドされると警備服の来た厳つい管理人のおじさんの顔が目の前に現れた。
「おはようございます‼」
「はい、おはよう。今日も朝から早いね。君たちは……」
その厳つい顔はにっこりと笑いながら優しく挨拶を返してくれた。
今日から新たな出会いと運命が待っているのだろう。
東の空からは太陽の光が窓ガラスを屈折し、反射して差し込んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます