とある橋の上で

眼下には、墨汁を流した様な川が流れていた。

此処は近所にある公園にある橋の上。昼間は 家族連れや、カップルなども多くいるが、夜間は一転して、静寂に包まれる。

僕もよく彼女と来ていた。

(彼女が死んでもう1年経つのか・・・)

と、突然ポケットの携帯が鳴り出した。

(きっと、会社からだろう)

そう思いながら、携帯を取り出そうとしたが手が滑り川に落としてしまった。

正直言って、この川に入るのは気が引けたが、幾ら防水仕様とは言え、一晩水に浸したままと言うのは不味い。

渋々、河川敷を下りて川に入った。

そして丁度、携帯を落とした真下あたりに来ると、足に何か硬い感触が有った。

それを拾う為に屈んだその時、何かが僕の手を掴み、川に引き摺り込んだ。


捥がく僕の身体を背後から誰かが抱きしめた。

それは、僕の耳元で何かを囁いた。

僕は、耳を疑った。

其の声は1年前に、彼女の声だった。

そして、彼女は

『やっと、こっちに来てくれるんだね』

と、言った。


僕の意識はそこで絶え、僕の身体は暗く冷たい川の底に沈んでいった。










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