とある橋の上で
眼下には、墨汁を流した様な川が流れていた。
此処は近所にある公園にある橋の上。昼間は 家族連れや、カップルなども多くいるが、夜間は一転して、静寂に包まれる。
僕もよく彼女と来ていた。
(彼女が死んでもう1年経つのか・・・)
と、突然ポケットの携帯が鳴り出した。
(きっと、会社からだろう)
そう思いながら、携帯を取り出そうとしたが手が滑り川に落としてしまった。
正直言って、この川に入るのは気が引けたが、幾ら防水仕様とは言え、一晩水に浸したままと言うのは不味い。
渋々、河川敷を下りて川に入った。
そして丁度、携帯を落とした真下あたりに来ると、足に何か硬い感触が有った。
それを拾う為に屈んだその時、何かが僕の手を掴み、川に引き摺り込んだ。
捥がく僕の身体を背後から誰かが抱きしめた。
それは、僕の耳元で何かを囁いた。
僕は、耳を疑った。
其の声は1年前に僕が殺してこの川に遺棄した筈の、彼女の声だった。
そして、彼女は
『やっと、こっちに来てくれるんだね』
と、言った。
僕の意識はそこで絶え、僕の身体は暗く冷たい川の底に沈んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます