羽化

パキパキ・・・


何かが割れる様な音に僕は目を覚ました。

卵が割れる様な音と布を裂く様な音が入り混じっていた。

(此処は何処だ?)

僕は、暗く狭い空間に閉じ込められていた。

必死に自分の記憶を辿ったが、何も思い出せない。


パキン。


乾いた音と共に真っ暗だった空間内に亀裂と目の眩む様な光が差し込んだ。

僕は必死にその割れ目に手を伸ばし、外の世界に飛び出した。

背中にはいつの間にか翅が生えていた。これさえあれば、どこまでだって飛んでいける様な大きな翅だ。


だが、突然大きな網目状の物が空から降ってきたと思うと、僕はその中にたちまち閉じ込められてしまった。次に、大きな薄橙色の物体が僕の翅を乱暴に掴んだ。

そして、それは僕の翅を強く引っ張り…。


僕の背中から嫌な音がした。









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