結局、属性など……
「遊びに行きませんか?」
「…………」コクリ
とある日の放課後、ツネヤスから誘われたアオイが静かに首を上下した事で始まったこのデート。
だが、デートと言ってもそれはただ町中を歩くだけ、行くあてが無い二人が生み出した必然と言える。
「映画館……」
ふと歩いていると右側に映画館が。
アオイはそれを見てそう口ずさむ。
そしてツネヤスはアオイを見下ろす様に眺め、クイっと指を映画館に刺し、無言で「映画館に行く?」と言いたげな態度。
そんなツネヤスにアオイはコクリ、二人は映画館へと入っていった。
中は、広いドーム状の部屋の真ん中にポップコーンなどが売られており、その空間に繋がる細い道の入り口には受付が。
そして、その上には上映している映画のタイトルが掲げられている。
そんな映画館の片隅で。
「はーい、そこのお兄さん〜、ワタシ〜、一人なんだけど〜、よければ一緒に映画見ない〜? え、彼女持ち? 嘘……!?」
だが、世間というものは狭いらしい。
そこには映画館で逆ナンを行う、自称恋愛のプロの姿があった。
幸いな事に二人には気づいていない様子。
二人は急ぎ、物陰に隠れ、その様子を伺う。
「おっかしいなぁ、今年はコレに決まりってファッション誌でも言ってたんだけどなぁ……」
そう呟く自称恋愛のプロ、ジュンコ。
だが、まるで青いゴム風船の様な奇抜すぎるファッションを纏った彼女に、周囲からは痛い人物に送られるそれと同じ視線が送られる。
その例外がいるとすれば、この口数少ない凸凹カップルだけだろう。
「歩くゴムボールですか……?」
「あれはレディガガでは……?」
「私も妊娠したら、ああなるのでしょうか……?」
「その前に誰とそんな関係になりたいのですか?」
「…………」
「…………」
二人は黙り込んで見つめ合う。
互いの感情は、表立って見えない、ただ立って見つめ合うだけ。
互いに何も喋りたくない訳ではない、既に喉元まで来て息を潜めている。
互いに伝えたい言葉がある、だが自分からそれを口にするのは苦手。
その為時間だけが刻々と流れる、時間が二人を置いていった様に。
だが、その止まった時間は動き出す、小さな男の子の言葉で。
「ねーねーお母さん、あの二人、キスするの?ねぇ?」
この言葉を聞いて同様する二人、ほんの僅かだが、目が一瞬大きく開いた。
そして、時間が経つにつれ、互いの顔は赤く染まっていく。
そして。
「…………」
「…………」
口が動く、それは小さく、僅かな動き。
互いの声は聞こえない、小さすぎて、周りが騒がしすぎて。
だが、言葉は伝わった、だから二人は静かに頷く。
きっと二人に言葉はいらなかったのだろう。
だから、互いに口をニンマリさせ、不器用な笑顔を見せあう。
彼らは互いに惹かれていたのだろう。
相手の持つ素の自分と言う属性を……。
「あ、あなた達何やってるの? は、もしやデート! なら、恋愛のプロの私に……」
そして今日もキューピットは仕事をした。
本人も気づかないまま。
属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか? 赤城クロ @yoruno_saraku
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