13-2
ドンガガたちは家中の皿を割り、椅子に座って談笑しながらキーナが来るのを待った。しばらくするとキーナが戻ってきた。家が地震の時のように揺れる。ドンガガたちは家の割れ目に落ちぬようそれを避けて床に死んだようにぐったりと横たわった。
キーナが家を開き大きな声を出す。
「あー、お人形さんが倒れてる! 家の中がめちゃくちゃだ!」
そう言って地団太をふむ。揺れて机が、がたがたと動く。
「動かない、地震でケガしちゃったのかな?」
大きな指でドンガガを持ち上げると家から出して外へと置いた。すぐにリリアも取り出して横に置く。
「お掃除しなくっちゃ」
歌うようにつぶやきながら指で割れた皿を掻きだしている。すぐに逃げ出したくなるのを我慢、慎重にタイミングを見計らう。
「ホウキないかな、ホウキ」
キーナはズンズンと足音を響かせながらホウキを探しにドールハウスを離れた。
「行きましょう!」
ドンガガとリリアは一目散に駆けだした。見つからぬよう森へと隠れながらミニチュアの世界の外を目指す。飛んでは見つかるのでリリアも懸命に走った。途中、二度転んだが手を取り合い助け合って二人は逃げ出した。
ミニチュアの外はいつもの見慣れた土壁の空間だった。
巨人の住処の外へ出たのだと期待したが辺りに転がっていた巨大な鍋や食器はそこがまだ彼らの居住区であることを暗示していた。
ドンガガは鍋の隅に隠れて様子をうかがった。幸い誰もいないらしい。家財道具の間をとことこと駆け抜けていく。急に空が暗くなった。
そう思った瞬間天から何かが降ってきた。真っ暗になり二人は慌てふためく。
「見いつけた」
野太い声の主が金属の何かに二人を摘まんで入れる。逃げようとドンガガはしゃかしゃかと走る。しかし、床は丸くてつるりと滑り、上へ上がれない。
ドンガガは愕然とした、これはボールだ。巨人のボールに入れられたのだ。上を見ると巨人の顔があった。キーナじゃない、大人の男の顔だ。
これが父親らしい。二人をじっと見ると「ん?」と凝視してドンガガの腹をぽよぽよと指で押し「お前人間だなー!」と叫んだ。巨人の機嫌が急に悪くなる。
「まだ残っていやがったか! 家の中をめちゃくちゃにする忌々しい害虫め。料理にして食ってくれる!」
怒って木の蓋を被せたかと思うとボールを持ってずんずんと歩き出した。少し歩くと巨人は立ち止まりごとごとと何やら作業を始めた。
ガシャガシャガシャと何かを振る音がする。時々止まってボトボトという音を挟んでまた鳴っている。何の音だろう。よく聞こうとボールに耳を当てると木のふたが空いた。
「お前たちは小さいからな。一品にもなりやしない」
さげすみながらドンガガを摘まみ上げる。顔を見るとぽちゃんと液体の中に放り込む。リリアも続けざまに放り込まれる。
まとわりつく液体は緑色でもったりしていて青臭い香りがする。ぺろりと舐めてみる。
「これはもしや! スムー……」
言い終わる前に巨人が蓋をしてガシャガシャと振り始めた。ドンガガとリリアはスムージーの中でもみくちゃになる。目を回し天地さえ分からない。
十分混ざると巨人は蓋をかぽっと外し器を傾けた。
二人はそのまま巨人に飲み込まれてしまった。
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