12-2
なぞなぞドラゴンは、はたと考え込んだ。
「測っても測っても減らないもの?」
ぶつぶつと呟いている。
「測っても測っても減らないもの?」
皆も考え込んでいる。
「降参ですか?」
ドンガガはふふんと笑いながら、たぽたぽと腹を揺らして歩いている。その姿を見つけてなぞなぞドラゴンはかっかっかと腹を抱えて笑い出した。
「分かったぞ! 測っても測っても減らないもの。それはお前の体重だ!」
「なんと!」
指摘されドンガガは膝からくずおれた。
「正解なんですか?」と一同がドンガガの顔を覗き込む。
正解には違いないのだが、お前はデブだと言われている気がして大変傷ついた。あまりに落ち込んでいるのでニッケルが「あまり気落ちしないでください」と背中をさすってくれた。
その後も問題は続いた。なぞなぞドラゴンはどんな問題でもすぐに答えた。「もうないか? もうないか?」とそわそわしている。
皆、一生懸命考えているのだがやはり素人の域を出ない。リトルフォレストの面々は問題を考えるのに必死で黙り込んでしまった。するとサンペリオの一人が「トットルティ!」と手を上げた。
「ハスタン、サパイオ、ルルカ、ソクラシヲ。マンマリーヤ、フエンテス、ハルタビラ」
「答えはサイだ!」
「オー、サパイオ」
何のやり取りをしているかさっぱりだが、頭を抱え込んでいる様子を見るに正解だったらしい。長がむむむと顔をこわばらせている。何時にない表情だ。
「ハルタンシャパリク、マンゼリラア! パセテヨ、ルルンガヒイ!」
突然怒鳴るようにわっと喋ったかと思うとなぞなぞドラゴンとにらめっこを始めた。どうやら勝負の駆け引きをしているらしい。皆緊張した様子でそれを見守る。
二人とも全く動かないので形勢が分からない。どうやら難問だったらしくサンペリオの人々も首をひねっている。そうしてじっと視線をぶつけ合うこと五分、ようやくドラゴンが「あーー」と言って体をのけ反らせた。そして肩を落とす。
「降参だ。約束通りビンを持っていくといい」
降参だ、と漬物ビンを差し出した。長は満悦の表情、サンペリオの面々が長を取り囲み「リラッパリラッパ」と歌い踊っている。
「どういう問題だったのですか?」
ドンガガはキャシーに問う。
「『この地球上で一番賢くて大きい生き物はなんだ?』と」
「正解は?」
「ヤーハセイ?」
キャシーが大きな声で長に問う。
「ポセルセヨー」
長は笑って答える。
「『なぞなぞドラゴン』とのことです」
「それってなぞなぞなんですか?」
「さあ?」
湖の岸辺でなぞなぞドラゴンが見送ってくれる。向こう岸にブルードラゴンがいるから会ったらビンを渡してほしいとのことだった。
頷いて皆、漬物ビンを被る。ドンガガの物はレモンの塩漬けのいい香りがした。ずっと嗅いでいたくなるにおいだ。ニッケルはピクルスの香りがすると言ってむせ込んでいた。
長が先導してくれるというのでそれに続く。長はすっと泳いで湖畔を離れたかと思うとイルカのようにひとはねして湖に潜った。皆、それに続く。
ドンガガは一人なぞなぞドラゴンを振り返ると礼をした。
「楽しかったです。ありがとうございました」
「なぞなぞを出してもらって礼を言われたのは初めてだ。こっちこそ楽しかったよ、ありがとう」
なぞなぞドラゴンは笑っている。そして忠告をする。
「向こうに着くと巨人の国がある。気を付けろ、奴らは残虐で狂暴だ」
「分かりました。ありがとうございます」
なぞなぞドラゴンはうんうんと頷いている。
「それではさようなら」
別れの挨拶をしてドンガガは湖にちゃぽんと潜る。水面がそっと揺れてしばらくするとまた真っ平に戻る。それを見届けるとなぞなぞドラゴンは眠りにつく。
いつまでも待っていよう、旅人が再びこの地を訪れる時が来るのを――
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