第24話 2018年10月31日

なんだかあっという間に秋になった。

あっという間に10月も終わりだ。

年をとって月日が過ぎるのを早く感じるのは

物事に慣れて新鮮さを感じなくなるせいらしい。

朝家を出るとまだ暗く、テンションが下がる。


庭のナツハゼが紅葉して美しい。

無理して建てた庭つき一戸建てにナツハゼがやってきたのは庭木の中で2番目だった。

まず、がらんどうな真砂土だけの庭を削り、駐車場を作った。

最初に植えたのはシマトネリコだった。

秋に園芸店で鉢植え1メートルくらいの高さのシマトネリコの鉢を買い、その冬は家の中に置いていた。

よほど家の中が居心地良かったのかシマトネリコは冬の間に繁りに繁った。

『シマトネリコって強いんじゃな』と思っていた。

まだ寒い日もある3月にそろそろ地植えにするべぇと庭に植えた。満を持して、という感じであまり心配もしていなかった。

が常緑樹のシマトネリコは寒さに驚いたのかあれよあれよという間に葉っぱが全て黒くなってしまった。

そしてあっという間に葉を落としてしまった。(正確にいうと半常緑樹であまりに寒いと葉を落とすらしい。)…』

これにはグゥの音もなかった。

一発目の庭木を枯らしたか…

家内と顔を見合わせたものだ。


しばらく丸裸のシマトネリコを苦々しい思いで見ていた。

適宜おかんが『あれは枯れているからもう抜け』と言ってくる。

家内から『今日またお母さんがシマトネリコを抜けと言ってきたんだけど…』と報告がある。

こちらも意地があるから『枯れてねえわ』と抜かずにおいておいた。

何も考えがなかったわけではなく、幹や枝に柔らかさや水気、青さがあり、また芽が出るのでは?という思い、というか願いも多少あった。

よく覚えていないが、たしかそのまま1年近く丸裸のままだったんじゃないかしら。

思えばよく辛抱したものだ。


ようやく芽が出ると息を吹き返したシマトネリコは再び繁りに繁った。

3・4年で5メートルほどになり、今では花っぽくない花が咲いて庭のあちこちからシマトネリコが生えてくる。

この全てが大きくなると森になってしまうので抜くのだが、これが結構な罪悪感なのだ。

一本抜き、スマン、二本抜きスマンと思う。


落葉樹は春先に芽が出ると抜群にキレイだが冬に葉を落とすと丸裸になってしまう。

昔の人の、家の外側に常緑樹を植えて目隠しし、家の近くには落葉樹を植えて夏は葉が出て日陰を作り、冬は葉を落として陽の光を入れるというのは大した知恵だと思う。


今では仇をとるかのように元気なシマトネリコはたまに剪定をしてやらなければ元気過ぎて枝が混みあい重たいイメージになってしまう。

剪定しても樹形は自然と整う。我が家も落葉樹がキレイなので落葉樹ばかり植えていたが後になって常緑樹をつけたしている。

雑木の感じが好きな人にはいい木だと思う。


どうでもいいことだが、本屋でなかなかの兄妹を見たので記しておく。

年は不明だが兄小学3年、妹小学1年くらいと見た。

妹『これ下さい』

店員『お金が足りません…』

妹『じゃ、これ下さい』

店員『これも…お金が足りません…』

兄『そんだけの金で本買えるわけねえじゃろ!コロコロアニキ○月号ありますか?』

店員『まだ発売してないです…』

兄『分かりました、別の店に行ってみます。』

こうして兄妹は秋の茜空に染まっていくのだった。

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