第22話 少し前の話
今回はハードボイルドな回になる。
そんな気がする。
※苦手な方は読むのをご遠慮下さい。
夏休み中に私はあるものに追われていた。
いや、襲われていた。
その日、私達家族は夕食後出かけた。
古着屋の夏物処分セールに向かったのだ。
市内の古着屋を2件梯子する予定だ。
国道2号線を東へと車を走らせる。
対向車のヘッドランプが流れていく。
愛車の機嫌が悪いようだ。
『おい相棒、もう少し辛抱してくれよ』
私は葉巻を吸いながら(吸えません)愛車に言い聞かせた。(言いません)
一件目の店へ着く。古着屋というよりはリサイクルショップで子供がおもちゃを見たりしている隙に服を見る。
私はこの時点でえも言えぬ違和感に気付いていた。
どこからか見られているような、死角から首筋を舐められているような、嫌~な感じがし、はりつくような汗をかいていた。
どこからだ?どこから来る?
いつくる?
自分一人ならいい。
しかし、この時の私は家族を連れていた。
後悔。
何故結婚してしまったのか。
何故家族をつくってしまったのか。
守りきれないことが分かっていたのなら家族をつくるべきではなかった。
一人で生きていくべきだったのだ。
一時の幸せに身を委ねてしまった。
あの時の私は傷付き、疲れていた。
私はその何かに追われるように店を出た。
もちろん家族には気づかせないように。
今度は国道2号線を西へ下り、側道を降りる。
『ふぅ』
思わず息を吐く。
どうやら撒けたようだ。
妻が『あなた、どうかなさったの?』と聞いてくる。
『なんでもないさ、少し疲れててね』
胸を撫でながら二件目に着く。
(くそっ)
店内に入ったとたん、またあの違和感に襲われる。
くそ、どこだ。
沢山の服と店内の音楽に感覚を鈍らせられる。
(そちらから来ないならこちらから行ってやる)
店内を駆け回るも見付けられない。
(くそっくそっくそっ!)
私は焦っていた。
見えない敵
家族を危険にさらす訳にはいかない。
私は家族に見つからないよう店を出てひたすら走った。
こんなに走ったのは何年ぶりだろう、怪我で公安を退いて依頼、鍛練とは無縁の生活をしていたのだ。(公安に入ったことはありません)
2キロ程走っただろうか
途中逃げ込めそうな所もなかった。
息が上がり、腹も痛い。
もう駄目かもしれない。
私は最後の力をふりしぼり、細い路地へ入った。そして人気のない用水路の上にかがんだ。
ズボンを下ろしながらかがんだ。
(よし、誰も来ていない!)
そして一気に用をたしたのだった。
※便意に襲われていました。
尻は手で拭いて、手は川で洗ったあと、もう一度コンビニで石鹸をつけて洗いました。
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