第21話 2018年10月9日

子供3人を体操教室に通わせている。

そもそもは体操を習わせたいと思っていて一件見学に行った。ちょうどその頃に一番上の子(娘)が家内に生意気なことを言ってぶちギレさせた。

そしてその見学に行った体操教室のコーチが厳しかったのを家内が気に入り、その体操教室に入れられたのだった。

体操だけでなく、礼儀にも期待したわけだ。


この入れられたというのは文字通り『入れられた』、どこをどう切っても『入れられた』というもので未就学児のクラスの子はコーチ恐ろしさに皆泣いているし、小学生のコースも戦々恐々、私語など一切なし、皆引きつった顔で来て引きつった顔で帰っていく。

他所の体操教室だと体操教室で新しい友達ができて、みたいな話もあるのだろうが、うちが通う体操教室には一切なし。うちの子もことあるごとに『辞めたい、辞めたい』と言ってくるのだった。

少し通うとコーチから一番下の子は可能性があるので選手コースに入れないか、という話があった。

選手コースは週5日あり、他の兄弟の塾やサッカー教室もあるためお断りしたが、運動神経の悪い家内はこの話に大いに喜んだのだった。


その体操教室には二人の兄弟が来ていた。その兄弟は空手もしていて、上のお兄ちゃんはかなりぽっちゃり、下の弟はしゅっとしていて、モテそうな顔をしている。

はじめ、その子達のお母さんはコーチを絶賛していた。(らしい)

上のお兄ちゃんは他の体操教室ではみかぎられ相手にされなかったが、ここのコーチは粘り強く教えてくれて跳び箱や鉄棒が出来るようになったと。

ところが半年ほど経つと風向きが変わってきた。どこそこの体操教室に行ったらすぐバク転を教えてくれるらしい、というのを聞いて体験に行ったら本当に1日でバク転ができるようになったらしい。(弟の方が)


お母さんは変わった。

まずそのバク転の話しを他のお母さんにし、コーチの厳しさを買っていたはずなのに『あんなに叱っては子供は萎縮して出来ることまで出来なくなる。』と言い、あっちの体操教室に移らないか、とロビー活動を繰り広げた。

この手の人はどこにでもいる。サッカークラブの方にも表ではいい顔をして、裏ではクラブに文句をいい、やめたい、チームを移りたいと言っているお母さんがいる。(らしい)

いつも聞き耳をたてて、あの人はこう言ったこの人はこう言ったと他のお母さんに電話をかける。(らしい)

体操教室の話しに戻るが、ロビー活動の賜物か口裏を合わせたのか、子供が夏を過ぎてバタバタと大量に体操教室を辞めていった。

やはりお母さんはロビー活動に長けていたのか小学校も違う、私生活も付き合いのない、おそらくもう会うこともないだろう残された家族にハンカチやクッキーを配って去っていくのだった。

バク転どうだろう。その子のもともと持っている能力にもよるし、体操教室に通った下地を無視してバク転の教室の方がいい教室といえるか…。


一方、体操コーチはどう思っているのだろう。今の時代、商売としては誉めて誉めて教えた方が教室も流行って儲かるだろう。

挨拶しかしないので知らないが副業をしていなければ、この教室に通う子供の数掛ける月謝がそのままコーチの収入である。

うちは金曜日に通っているが他の曜日にどのくらいの子供が通っているのか。


しかしコーチは怯むことなく怒鳴り続けている。なかなかの胆力。来る者拒まず去る者追わず。

仕事が終わって迎えついでに見学しているとその日はうちのバカタレ(長男)がターゲットになっていた。話を聞いておらず皆と違うことをしていたらしい。

うちはどうぞ叱って下さい、というスタンスなので動じない。非はバカタレにあった様だしコーチは怒っても手は上げない。


教室が終わり生徒が逃げるように帰っていく。この日は前出の兄弟と女の子が辞めていった。と、珍しくコーチが話しかけてきた。

『○○が違うことをしてたのは分かってたんですけど最後なんで自分の力でやらないといけないと思い言わなかったんですけど、何にも聞いて来ないんでちょっと言ったんですけどね、最後なんで。

自分の力でやらせないとと思ってだいぶ待ったんですけど聞いて来なかったんで、最後なんで』

あまりにも大量離脱するので誰が辞めて誰が残るか分からなくなったのか、やたら最後最後と言ってきた。


…バカタレは辞めません。

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