第17話 肉吸い

初めての肉吸い

について書こうと思っていたが、急遽カツ丼について書かなくてはならなくなった。

カツ丼だから美味いわけじゃない。

美味いカツ丼があるだけだ。

つまり不味いカツ丼もあるのだ。


嫁がカツ丼を作ってくれた。

最近、食いたい食いたいと繰り返していたからだ。

濃い目の甘辛いダシ、そこに落とされた卵、そしてその卵に包まれたトンカツ。卵は2個は欲しい。

それらを迎える白米。

この世の何よりもうめえ

実はトップランクに好物なのだ。

豚カツ定食よりカツ丼派。


嫁のカツ丼来る。

おやっ?と思った。

まずあの濃いダシの色がなかった。

全体的に白(透明の意)かった。

不安が生まれた。

醤油とみりん?の甘辛い匂いもない。

一口食べて考えた。

甘い。塩気はない。

大量の玉葱でただただ甘い。

ご飯もあまり湿ってない。

ダシが少ないのかと思った。

「ダシってまだある?」

勇気を出して聞く。

やはり少し機嫌悪く「あるよっ」と言って鍋を持ってきてくれた。

嫁は基本目分量で料理をする。目分量で料理するのだが味見はしない。なのでたまに大きく失敗する。そのくせ失敗すると機嫌が悪くなるし、料理に何か言われるのも嫌う。

持ってきた鍋を横目で見ても変だなと思った。

透明。

ダシ透明。

透明感。

に、同じく透明の玉葱。玉葱大量。

とわずかな卵。

化粧品なら褒め言葉じゃけどな・・・カツ丼じゃからなコレ

嫁がカツ丼にダシをかけてくれる。

米は湿ったがやはり甘い。ダシの味は薄く、塩気はほとんどない。そして大量の玉葱が甘い。

玉葱が甘いのは本来悪いことではない。むしろ淡路島では喜ばれるかもしれない。

なんだろう、色が薄いといって薄口醤油なわけでもない。

玉葱の水煮?に溶き卵が入ったもの??


どこでもない場所で

誰でもない僕に

いったい何が出来るというのだろうか。


何度でも言おう。

美味いカツ丼があるだけだ。

カツ丼だから美味いわけじゃない。

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