第9話 宇宙論(1)

残念ながら、

残念でもないのだが、生き物が生きることに何の意味もないと思っている。

あなたが生まれてきたことに何の意味もない。


人は宇宙の中でちっぽけである。あまりに小さい。地球でさえ小さいのだ。

生まれてきた証を何か残したい、という人がいるが何も残らない。残すことに意味もない。

大概の事は2、3代すれば忘れ去られてしまうだろう。中には数百年後に語り継がれる人もいるがそれも大した意味はない。


宇宙がどうやって始まったかは分からないが地球や太陽系がいつかは終わることは違いないのではないか。永遠に燃え続けるものなどない。それが遠い遠い未来だとしてもいつかは太陽も燃え尽きるのだ。

もしその時に地球が残っていたとしても暗く冷たい静寂の世界で生き物は生きていけないだろう。

人類が生き残ることにも意味はないが、もし生き残るとすればどんな方法があるのだろうか?


やはり一次的に思い付くのは地球を離れる、という方法ではないだろうか。

NASAなどが火星移住計画を進めているそうだが、これは遠い世界の聞き流せる話ではないかもしれない。

我々人類の子孫の命を握っているかもしれないのだ。

もし、人類が太陽系の終端後も生き延びようと思うなら火星で停まってはいられない。さらにその向こうへ、太陽系の果てを越え、別の太陽を探さなければならない。

途方もない話なのだ。

火星移住計画は数年後に達成されるかもしれないが太陽系を出るとなると何世代あとになるか、そもそも達成されるのか不明だ。

そういう意味で人類の絶える恐怖を子孫に丸投げにしているとも言える。


第2案として、太陽をコントロールする、というのはどうだろうか。

今ある太陽をどうにかコントロールして半永久的に燃やし続ける技術を開発する、もしくは人類の太陽を作りコントロールする技術を開発する。

太陽の代わりになるものが作れて、移動もさせることが出来るなら人類は太陽系銀河を出なくていいかもしれないし、もしくは人工太陽を連れてどこまでも遠くに、もしかして宇宙の果てまでも行けるかもしれない。


いずれにしてもこれらの方法には問題がある。

それはタイムリミット、時間制限だ。

今、人類は石油燃料の恩恵に預かっているが銀河を出たり、太陽をコントロールするような技術、というかエネルギーは石油燃料を燃やしたような類いのものではないだろう。

原子力のような、もしくはそれよりさらに大きな力かもしれない。

もしかしてブラックホールを継続的に利用するかもしれない。

そしてタイムリミットとは人類の発展が太陽系銀河の終わりに間に合うのか、ということと、もしそれが間に合ったとしても、その時にそれだけの物資やエネルギーが地球、もしくは人の手の届く場所に残っているのか、ということだ。

詰め将棋の様に思う。

今のうのうと生きて、あなたが何も思わずにファミチキを齧っている間にそのタイムリミットは来てしまっているかもしれない。

そのキャンプでバーベキューに使った炭が、ちょうど人類が生き残るかどうかのエネルギーの境目だったかもしれない。

ぼやぼやのんびりしている間に、まだ勝負時じゃないなぁと思っている間に、自分の打つ手が無くなってしまい気付いた時には取り返しがつかないとこまで来ている。

今この瞬間がその境である可能性はある。


あとにつづく

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