第6話 2018年8月6日(月)ウェットティッシュ
今日はウェットティッシュを孤独してみようと思う。
おじさんとウェットティッシュ。
とあるおじさんがコンビニに入っていく。まず本コーナーで気になる本を軽く立ち読みし、飲み物コーナーに入っていく。
おじさんは少し迷いコンビニブランドの炭酸飲料を買う。コンビニブランドの商品は大手飲料メーカーのものに比べ少し安いのだ。
それから酒コーナー、冷凍食品コーナーをやり過ごし紙パック飲料コーナーを経て弁当コーナーに差し掛かる。
おじさんは年々揚げ物や油っこいものに弱くなっており、唐揚げ弁当とか焼き肉弁当に手が伸びない。
おじさんはおにぎりを2つ手に取る。
1つはツナマヨ、1つは海賊おにぎりである。海賊おにぎりに入っている4つの具はツナ、辛子明太子、海老マヨネーズ、しそ昆布と書き連ねてびっくりする。海賊おにぎりにもツナ入ってんのか・・・。
おじさんは色々食べたいのだが、腹事情及び財布事情により、1つで4つの味が楽しめる海賊おにぎりを選ぶのだった。
それからレジ横でブラックの缶コーヒーをおもむろに掴みレジに行く。
そう、おじさんは昼御飯を買っているのだ。
先に手に取ったコンビニブランドの炭酸飲料は昼飯用、コーヒーは朝の仕事前の一杯用だ。おじさんは昼飯を炭酸飲料でいける、比較的おじさんの中でも若い、柔軟なおじさんなのだ(と思いたい。)
ここでレジに『おにぎりは温めますか?』と聞かれる。おじさんはモジモジしながら『そのままで』と答える。
このおじさんはおにぎりは温めない。海苔もツナマヨはしなっとしたヤツではなくパリッとしたヤツだ。
そして気恥ずかしい。『温めますか?』に対し、温める時はいいのだが、温めない時の正しい返事をもたない。何と答えるのが正解か。
『結構です』は、お願いしているのか断っているのか曖昧だ。
『いいです』はどうか。『いらないです』はどうか。
たとえ一度限りの相手とはいえ少しつっぱねた感じがしないか。
おじさんは大いに悩み、『そのままで』と言葉尻が聞き取れないような声でモジモジと答えるのだった。
さてここからが肝腎である。
コンビニのお手拭きだ。
おじさんはコンビニのお手拭き愛している。
おじさんは昼の休憩に入り、コンビニの袋から中身を取り出していく。
この時、手は水道で洗っており綺麗なものと仮定したい。
おじさんはこのコンビニお手拭きで顔が拭きたい。おじさんは敏感だ。世間一般でおじさんの顔汗によるテカり及びニオイに対するバッシングを知っている。
テカってるんだろうな俺、と思っている。
臭いんだろうな俺、と思っている。
早くなんとかしたい。
リセットした状態で何事も無かったかのように午後からの仕事に望みたい。
誰もこちらを見ていないことを確認し顔を拭き出す。
どこからいきましょうか。
まずオデコをいきたい。
オデコを何度か拭く。シワにそって横に拭いていく。ここで一回お手拭きを見て下さい。真っ白だったお手拭きが一部黒ずんでいる。
『とれてるとれてる』と、おじさんは嬉しい。
ここで一度オデコを触って下さい。
ぬるぬるしていたオデコがキュッキュッとまではいかないがサラッとしている。
次はUゾーンいきたいですね。頬っぺたから顎へ丁寧に拭きあげる。
再びお手拭きを見る。更に広い範囲が黒くなっている。勢力は拡大している。
もはや気分はコンキスタドール
ヨーロッパを征服し、アジアにまで進出しようと言うのか。
次は・・・鼻ですね。
ここもポイントが高い。小鼻の脇からニオイが出るらしい。おじさんは入念に小鼻の脇も拭きあげる。それから耳。表の溝を拭き、耳の裏を拭く。耳の裏もニオイの元となるらしい。おじさんはリサーチ済みだ。
耳の裏を入念に拭き、首の表、裏と拭いてからおじさんはお手拭きをひっくり返す。
まだいける。
おじさんはもう一度周囲を見回す。『誰も俺のこと見てねーだろーな?』
悲しいかな、誰もおじさんのことを見ていない。『ザマーミロ』と、おじさんは残った面積で目やにをチェックし、鼻くそをほじり、最後に鼻をかんで元の袋に入れて捨てるのだ。
おじさんは大満足。
お手拭きから120%以上の充実感を得るのだった。
なのでおじさんはお手拭きが欲しい。
おにぎりなので箸は要らん。
レジがお手拭きを入れてくれないと先程のモジモジとは思えない語気で『お手拭きっ』と言うのだった。
そして、おじさんとは俺なのだった。
※お手拭きについての文章でしたが題名がウェットティッシュとなっておりました。
訂正はしませんが慎んでお詫び申し上げます。
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