初めてのお見合い

あきらさん

第1話

「後は若い者二人でやってもらいましょうかね」

「そうですね。私達は外に出てましょうか」


 そう言って、お互いの両親は何故かリュックを背負って退室した。

 今年で28になる僕は、人生で初めてのお見合いをしている。

 相手の方は、篠山 桜子さんという同い年の美人さんだ。

 まだ会ったばかりで、内面的な事は分からないが、僕は一目見た時から彼女と結婚したいと思ってしまった。

 何とか気に入られて、結婚までこぎつけたい。

 そう思っていた矢先に、突然彼女の方から質問をしてきた。


「永井さん……いや、輝男てるおさんとお呼びした方がよろしいかしら? 輝男てるおさんは好きな技は何ですか?」


 技!?

 いきなりの質問にしては内容がざっくりしすぎる……


「え……え~と、またぎフェイントです」


 僕はあわてて訳の分からない事を答えてしまった。


「ああ~!あの二十歳前後の大体の人達がやる俊敏なやつですね!」


 桜子さんの反応は、分かっているのか分かっていないのか、良く分からない返答だった。


「私が好きな技は、ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックス・ホールドです」

「そ……そうなんですね」


 女子プロ好きか!?

 かろうじて知っていた技名だったが、まさか最初からこんな質問をされると思っていなかった。

 良く考えると、こんな美人さんなのに結婚相手がいないって事は、ちょっと変わった所があるのかも知れない……


「さ……桜子さんは休日の時、どう過ごされてるんですか?」

「私はオークションが好きで休みの日に良く行くんですが、主に出品する側で参加させていただいてます」

「へぇ~……そうなんですね。どんな物を売ったりするんですか?」

「喧嘩です」

「…………」


 ただの冷やかしという意味だろうか……


「輝男さんは休日の日は、どんな画像を見ているんですか?」


 エロい画像とでも言わせたいんだろうか……


「お……主に子犬です」

「そうなんですね!私も子犬大好きです!良いですよね~!ちっちゃくて本当に可愛いですよね~!」

「桜子さんは、どんな犬種が好きなんですか?」

「イングリッシュマスティフです!」

「そうなんですね……」


 世界一デカイ犬じゃん!!あれ、100㎏くらいあるやつでしょ!?

 ちっちゃいのが好きなんじゃないの!?


 何か雲行きが怪しくなってきた……

 桜子さんは、外見を破壊するほどの威力を持つ内面の持ち主なんではないだろうか……


「輝男さんは動物を飼っていらっしゃるんですか?」

「いや、飼ってません。桜子さんは?」

「飼ってますよ」

「何を?」

「86歳のホームレスです」


 もはやホラーだ!!

 やべー奴だ!!


「ちょ……ちょっと両親を呼んできますね」


 僕は危険を感じ、足早にこの部屋を出ようとした。


「あっ!輝男さん!」


 しかしドアを開けた瞬間、そこには足場がなかった!!


「ここ、飛行機の中ですよ!」


「両親が退室する時に背負ってたリュックはパラシュートだったのね~!!って、どんなオチ〜!?」

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初めてのお見合い あきらさん @akiraojichan

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