缶詰の中身(直し版?)

@11245

第1話

近年、格差社会が広がっていく時代、子供には苦労させないと大人たちは必死で勉強をさせ、将来の安泰を願った。

そんな窮屈な社会の中、皆心を押し殺し死人の顔をし生きている。

しかし、男は違った。

まだ未来はあると願い、その未来を築いていく子供たちに明るい方を向いてほしいと缶詰を作る。

そして少し寂しい路地裏に小さなお店を作り売った。

「さあさ、いらっしゃい、これらはただの缶詰じゃないよ。いろんなものが観れるのさ!」

大声を張りあげて人を呼び寄せる。

すると小さな女の子がその缶詰を興味深そうに眺ている。

お嬢ちゃん、この缶詰に興味あるかい?」

聞いてみると小さく頷き返す。

「じゃあ、どれか一つ見せてあげよう。

どれがいい?」

そうたずねると、一つの缶詰を指差す。

「ようし、ちょっと待ってろ!

きっと驚くぞ!」

そう言い、勢いよく缶詰のふたを開ける。

すると、ジオラマのような風景が浮かび上がり、菜の花が風にふかれ優しく揺れている映像、それにつられて蝶々がひらひら優雅に舞う光景が見えてきた。

「どうだったかい?凄かっただろう。

次はお母さんを呼んできて買っておくれ」

少女は、目をキラキラと輝かせるもう一個の缶詰を指差す。

しかし男は少し困った顔をし軽く掻く。

「困ったなー、これ全部売り物なんだが…しかしまあ、いいだろう…もう一つだけだからな」

「わかった、ありがとう」

小さな女の子の表情は、さらに明るくなり次の缶詰を選ぶ。

次は宇宙の光景が広がり、あやゆる惑星と星が飛び出し、とても綺麗に見える。

次々興味を示し、見つめる少女に渋々と聞いていると、とうとう缶詰がなくなってしまった。

「悪いねお嬢ちゃん、今日はどうやら終わりみたいだよ」

「おじさんありがとう、また見せてね、楽しみにしているから」

そう言いお店を後にする女の子は、初めて見た時よりも明るく、歩く足がステップしているようだった。

見送る男は結局売り物にはならなかったが、なんだか未来を見せたような気をがして気分良く帰っていった。

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