僕らは...19

「あぁ、わかった。頑張れよ、紅蓮」


「でも、冬夜はその日、学校に来ないでほしい。生徒の鏡である生徒会長が恋愛禁止の校則を破るのを弁解する姿なんて、情けなくて見てほしくない」


「お前がそう言うなら、俺はその日学校を休む。でも、俺はいつでもお前を応援してるから」


「うん。その言葉だけで励みになる。ありがと」


三日後、紅蓮は全校集会を開く。でも、俺には情けない姿を見てほしくないから学校を休んでほしいと言った。紅蓮が素直に本心を言わないことは中学の頃から知っている。


だから、俺はこっそりでもいいから、紅蓮が皆の前で全校集会で話をする日に学校に行くことにした。


あっという間に全校集会の日になった。


俺は紅蓮に学校に来てることを知られないように、その日は生徒会室と教室には近づかないことにした。


全校集会は朝からあるので、生徒は眠たそうに目をこすりながらも体育館へと向かい、俺は紅蓮に見つからないように全校生徒が揃い、体育館の入り口の扉が閉まったあと、体育館入り口付近にて、紅蓮の全校集会を聞くことにした。


「皆さん、おはようございます。生徒会長の如月紅蓮です。今、学校を騒がせている、自分が同性愛者ではないか、そして、作家である神崎紅と同一人物ではないかという事実について話します」


紅蓮は普段通り、挨拶をし、すぐに本題へと話をつづけた。


「単刀直入に話すなら、どちらも事実です。作家の神崎紅は小説を書いてる時のペンネームです。そして、同性愛者でもあります。自分の作品の一つにある俺様副会長と不器用な僕も、自分の自己満足にしか過ぎません。だから、副会長である神崎冬夜の苦情は一切認めません。冬夜は自分とは何の関係もありません。中学からの親友で、自分は彼のことが好きですが、彼は自分を友人と思っている。その真実がある以上、これ以上の批判はやめてください。同性愛である自分を気持ち悪いと思うのならば、生徒会長からおろしてもらっても構いません」


(紅蓮が……俺のことを好き?)


俺は今、夢を見ているんだと思った。


紅蓮の好きな相手が俺。そして、俺は紅蓮のことが好き。つまり両想いだったということ。


だけど、好きな奴がいるのかと答えた時になんで俺の名前を出さなかったんだ?


その時、昨晩、紅蓮が俺に「返信不要」という題名で送られてきたメールを思い出していた。

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