僕らは....18
あの時、新聞部の誰かが紅蓮の後をつけて、紅蓮が神崎紅という情報を知ったんだろうと俺は思った。
だが、紅蓮の書く作品が自己満足や同性愛者という情報は理解が出来なかった。
夏休みの終わり、度胸試しの時に泣いていた紅蓮を俺は抱きしめた。
それに文化祭の夜にもチョコレートボンボンで酔った紅蓮が愛おしくて抱きしめた。
それを新聞部が仮に見ていたとしても、まず疑うべきは俺じゃないのか? などと思った。
だからこそ、生徒会室の扉を勢いよく開けては、本人にこう言い放った。
「紅蓮。お前も掲示板に貼ってあった記事を見ただろなぁ、紅蓮」
「……」
「ぐれ……」
なぁ、なんで何も言ってくれないんだ? どうして、目を逸らす?
他にも、言いたいことは、たくさんあった。
お前の書く小説を自己満足だと言われたままでいいのか。
それにどうして、俺と出会った時から今までのことを小説として書いたのか。
本当は俺のことをどう思っているのか。
掲示板に張り出された記事は、瞬く間に学校中の噂になった。
生徒会室前にある目安箱には「今すぐ如月紅蓮を生徒会長からおろせ」「学校の鏡である会長は淫らな行為をしている」などと、あることないことを書いてある大量のゴミの山と苦情の紙で溢れかえっていた。
それでも紅蓮は苦悶の表情一つ見せることなく、学校へと足を運んでいた。
俺が生徒会室に入ろうとすると
「……っ」
生徒会室の部屋の片隅で紅蓮が泣いていた。
「紅蓮……」
そうだよな……新聞部からの嫌がらせや生徒からの大量の苦情があった中で、いくら堅物と言われている紅蓮でも悲しくもなる。
その時、俺は一つの決心をした。
今後、どんなことがあっても紅蓮を守ってみせると。
紅蓮が俺ではない誰かを見ていたとしても、俺はそれでも紅蓮のことが好き、その事実は変わらない。
紅蓮を悲しませる奴は誰であろうと許さねぇ。
「紅蓮。俺はお前の側にいつもいる。だから安心しろ」
俺はそう言って、紅蓮の頭を撫でた。
「冬夜ありがとう。親友が側にいてくれるなんて、僕は幸せ者だよ」
さっきまで泣いていた紅蓮の涙が止まった。
親友が側にいてくれるだけで僕は幸せ者、か。それはこっちのセリフだよ。
ただ、側にいつもいると言ったのは好きな人として .... と言ったつもりだが、紅蓮、お前には伝わってないよな。
「冬夜。三日後、全校集会で皆に全てを打ち明けることにする」
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