最終章
僕らは…16
* * * * *
文化祭が終わってから、二週間が過ぎ、十一下旬。季節は秋から冬になった。
いつものように生徒会の書類を終わらせた放課後、俺は久々に紅蓮を誘い、本屋へと来ていた。
「冬夜の好きなマンガ、新作が出てる」
「あぁ、見つけてくれてありがとな .... 紅蓮」
いつものようにたわいのない会話を紅蓮としていた。
だけど……
(俺は本当にこれでいいのか? )
未だに俺は紅蓮のことが好きだということを伝えていない。
結局文化祭でも、紅蓮と一緒に回れたのはいいが、それでも紅蓮の本音を聞き出すことは出来なかった。本音を聞き出すどころか、俺は紅蓮と文化祭を回れたということに浮かれていて、聞くことすらを忘れていた。
紅蓮、お前の好きな奴は一体誰なんだ?
いい加減教えてくれよ……なんて聞けたら苦労はしない。
それに一度聞いて、教えることが出来ないと言われたのにしつこく聞くことも出来なかった。俺は紅蓮の全てが知りたいと思っている。だが、それと同時に怖いのは、紅蓮に嫌われること。なにがキッカケで紅蓮が俺のことを嫌いになるか、わからない。
だから俺は嫌われることを恐れ、ほんの小さなことさえ、紅蓮の表情を伺いながら聞いている。俺は好きなマンガを手にとり、レジに向かおうと紅蓮に一言声をかけた。
「じゃあ、買ってくるから出口で待っててくれるか?」
「ん、わかった」
返事をした紅蓮は、本屋の出口に歩き出して行った。
俺は紅蓮を待たせないようにすぐさまレジへ向おうとした。だが、レジ付近に気になる本が参列してあるのを俺は見落とさなかった。
「これは……」
そこには、店長オススメと書かれた、神崎紅の新作、「俺様副会長と不器用な僕」がタイトルのラノベ小説があった。
俺はその本を見たとき、あることを思い出していた。それは夏休み最終日、紅蓮が担当編集者、久遠先生と話していたとき、次の新作では自分と好きな人の話を本にすると言っていた。
その本がこれか。俺様ってところは違うが、副会長ってところは俺と紅蓮みたいだな……そう思った。俺はマンガと一緒に神崎紅の新作も購入した。
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