第18話
めちゃくちゃここから帰りてぇ…………
俺は今、そんな気持ちでいっぱいだった。
俺は高校の廊下に置かれてる椅子に座り、ある人物を待っていた。その人物とは言わずもがな、あの人だ。
「おーい!!」
120センチという小柄ながらも最低限のお洒落な服装を着て、何を意識したのか大きいサングラスをつけている母さんがトコトコと俺の所へとやってきた。
なぜ、母さんが高校に来ているのかというと、今日は三者懇談であった。三者懇談とは日頃の学校生活を先生が生徒の目の前で保護者に伝えるなどいった生徒にとって無くすべき学校行事No.3に入るやつだ
特に俺の場合は家庭状況がマジ卍なので、あんまり母さん達と家の中以外では関わりたくないし関わらせたくはなかったと思っていたが、そうもいかなかった。
母さんが「よいしょ」と言いながら、俺の隣に座った。
どうしよう。周りからの目線が凄い。隣のクラスの前で座っているお母様の目がマジで痛い。「え?あれ、あの子のお母さん??マジ??ヤバ!!」みたいな気持ちが凄く伝わってくる。
「次、どーぞ。」
ガラガラとスーツ姿の山田先生が扉を開け、俺たちを招いた。俺は早くここから抜け出したかったのですぐに教室に入った。
「こちらの方におかけ下さい。」
「親切にどーもな」
山田先生が、俺たちを席に座らせたあと、手持ちのファイルからいくつかの書類を取り出し俺たちの方に差し出した。
「えーと、まずは成績表からですね。どうぞ」
俺は即座に成績表を手に取り、視界に入れる。
現代文 3
古典 3
数学 3
世界史 3
日本史 3
英語 3
体育 5
「犬龍くんの成績は普通ですね。良くもなければ悪くもないです。ただ、運動神経だけは周りの子よりもずば抜けて高いです。もし良かったら何か運動部に入れた方がいいのでは??」
山田先生がコピーしてある俺の成績表を見ながら説明する。普段、適当なのに今回は真面目に説明しててちょっと驚いてる。
「おい、母さん。ちゃんと聞いてる??」
「おー!!聞いてるぞ。お前、相撲部に入るんだろ??」
入らねーし、ちげーよ!!今まで何を聞いてたんだあんたは!!
「あの、お母様。ちゃんと聞いてましたか??」
ほら!!普段、適当な山田先生でも驚いてるだろ!!
「相撲部じゃなくて、将棋部に入ったらどうかっていうお話をしてたんですよ」
違う!!違うよ、先生!!前言撤回!!やっぱり、この人適当だ!!
「そっかー。お前、美術部に入るんか」
「もう、あんたは黙れ!!頼むから!!」
俺は母さんの口を手で抑え、山田先生に「続きどうぞ」と言って、三者懇談を無理やり続行させた。
「まぁ、犬龍くんはクラスでも見てる限り友達と仲良くやってますし、授業も真面目に聞いてるんでこちらから特に言うことはありません。何か、お母様から質問ありますか??」
「あんた……………童貞か??」
先生に対しての質問じゃねぇよ!!俺に対しての質問だよ!!あと、質問内容がヤバすぎるだろ!!
「こう見えて、高校の時に既に卒業しましたね」
「マジ!?どっからどう見ても童貞にしか見えねぇ!!」
「ふっ………、まだまだですね。お母様」
え!?何、この会話!?本当に三者懇談!?
「まぁ、冗談はこれくらいにして。あ、これ、夏休み明けにやる学校祭についてのプリントですね。目に通して下さい」
「分かった」
その後、特に世間話を次の子の三者懇談の時間になるまで行った。
「では、この辺で。今日はわざわざありがとうございます。足を運んでいただいて」
「気にすんな。息子が学校でどんな生活を送ってんのか、知れて良かったぜ。また、明日来ていい??」
「いいっすよ」
「よくないですよ!?」
先生の適当な対応に俺は焦りながらツッコミを入れる。山田先生は「本気にすんなよ、童貞」と一言余計なことを言われた。
「では、気をつけてお帰りください。」
「おう。またな、先生」
「あ、ありがとうございました〜」
「あ、犬龍。お前、早く英語の課題出せよ。職員室で松本先生、めちゃくちゃキレてたぞ」
「が、がんばりまーす。」
マジか!!もう、今日、寝れねぇじゃん!!
「じゃあな。」
先生の発言で気力が全て無くなった俺は手を振り、そのまま教室から出た。
ポツンと残された先生は次の子の成績表を取り出しながら一言。
「終焉龍がまさか人間の子を育ててるなんてなぁ。いとおかしだな」
と、ボソッと呟いたあと、廊下で待っている生徒と親を教室に招くため扉の方に向かって行った。
普通の人間である俺の母さんはドラゴンで父さんは………チワワ!? 菜々瀬 晴人 @Maguro1627
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