第11話

 『拾ってください』


 俺は道路の隅でそう書かれたダンボールの目の前に立って頭を悩ましていた。


 最初は犬か猫捨てられてんなぁ、可哀想だなぁ、家で飼ってあげれないかなぁみたいな軽い感覚でダンボールの中身を開け、被っている布をぱらりとどかしてみるとびっくり仰天よ。俺、驚きすぎて腰を抜かしたからね??



 だって、中にいたのは翼の生えている馬、すなわち、ペガサスだったもん。しょうがないじゃん。



 本来は白いはずなのだが、土や泥なので汚れていた。しかも、弱っているのか、「ひ、ひひーん」と、弱々しい声で鳴いていた。てか、ペガサスってひひーんって鳴くんだな。あ、今はどうでもいいか。


 「とりあえず、連れて帰るか。このままじゃ騒ぎになると思うし」


 俺はそう言ってダンボールごと持ち上げて家に向かった。本音で言うと見つけたのが俺で良かったと思っている。もし、この子を見つけたのが一般市民とかだったら絶対にこのペガサスの子は珍獣として世間のさらし者として扱われるに違いない。


 あと、このペガサスと俺はひとつの共通点がある。それは、両親に捨てられてしまったということだ。このペガサスは実際、両親に捨てられてしまったかどうかは分からないが、今は一人ぼっちだということには間違いはない。あの頃の俺の目によく似ていた。


 これは、とても寂しくて辛い目だ。


 「安心しな。少なくともお前はもう1人じゃねぇよ。」


 俺はほほ笑みながらそう呟いて、片手でペガサスの髪を撫でてあげた。すると、ペガサスは「ひひーん」と今度は少し嬉しそうな感じで鳴いた。


 てか、ここ最近、人外生物に出会うこと多くなったなぁ。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「おい、それはなんだ」


 「………ぬいぐるみです。」


 「嘘下手か!!普通に翼動いてんじゃねぇか!!」


 そうツッコミされて、俺は母さんにチョップを喰らった。まぁ、当然ちゃあ、当然だよな。だって、帰って早々、今俺、ペガサスを抱えてるもん。そりゃあ、天下の終焉龍である母さんだって驚くだろうな。


 「じゃあ、今日の夕飯、馬刺しも加えようかな」


 なんて怖いことを言い出すんだこの人は!?俺、食用として持って帰ってきた訳じゃないんですけど!?


 「じゃあ、隼人はそのままそいつ抑えてて。今、首落とすから」


 「落とさせねぇよ!?まずは話を聞いてくれ!!」


 俺はそう言って、ペガサスを身体全身使って保護し、なんとか母さんをテーブルに座らせる。そして、タイミング良く、父さんも帰ってきたので父さんもチワワフォームにしてから、テーブルに座らせた。


 「それ、もしかしてペガサスかい??初めて見るなぁ。イメージ通り綺麗だ」


 当たり前だ。帰ってきてすぐに綺麗なタオルで汚れを落としたんだ。まだところどころ落としきれていないが、それでも十分、ペガサスとしての輝きは戻ってきているはずだ。それに気づくパピー、流石だわ


 「そいつ、どうしたんだ??」


 まだ、母さんはムスッとした表情で質問してきた。まぁ、想定内だ。問題ない


 「道路で捨てられてたんだ。見た感じ、かなり弱ってたしさ、あと種族が種族だから、放っておいたらヤバいかなって思って。あと、俺と同じ捨て子だったから耐えられなくて」


 よし!!これで行ける!!と思っていたが、さっきまでペガサスの魅力にうっとりとしていた父さんが急に真顔になった。


 「隼人。」


 「ん??」


 「お前はもし、そう答えればこの子をうちで預かれると思っているかもしれんが、そんな甘くはないよ。もし、これから先捨てられている子を見つけたらお前は全部抱えるのかい??」


 「うっ…………」


 痛いところを突かれてしまった。確かに、父さんの言葉は一理ある。チワワなのに何も言い返せないなんて…………


 「で、でも!!」


 「でもじゃねぇよ。早くそいつをいたところに戻して来るか、馬刺しにするか選べ」


 何その究極な選択!?もっと何か他になかった??


 「け、けど!!俺はこいつのことは放っておけない!!確かにみんながみんな抱えることはできないけど、抱えられるチャンスがあるなら俺は抱えていきたい!!もし、抱えれたのにやらなかったら、絶対に後悔する!!」


 俺は真剣な表情で本音を言う。しかし、母さんは鼻で「ハッ」と笑う。


 「お前、それかっこいいセリフ言ってるぽいけど、ほぼ仮面ライダーオ〇ズのセリフじゃねぇか!!」


 あ、バレてた。え!?めっちゃ恥ずいんですけど!?


 「け、けど全て俺の本音だ!!もし、受け入れてくれなかったら俺はこいつを連れてこの家を出て、河川敷やら公園から高校行きながら夜遅くまでバイトして乏しくこいつを養いながら幸せに暮らしてやる!!」


 「リアリティありすぎだな、おい!!」


 母さんがツッコミを入れる。だけど、俺は本気だ。もし、ダメだったら言ったことまんま実行してやる


 「隼人………、本気なんだな??」


 父さんが真顔でこっちを見る。普段しないような顔つきなので少しビビってるが怖気ずに立ち向かった。



 「あぁ!!俺はこいつを幸せにする」



 「それを絶対に最後までやり遂げると僕と男の約束できるか??」


 「できる!!」


 すると、父さんはニコッと笑い


 「分かったよ、好きにしなさい」


 「父さん………、ありがとう」


 俺と父さんは拳を重ねた。これぞ、男の約束というものだ。しかし、母さんは納得の言っていない表情をしていた。


 「ふん!!パパが許しても私は許さねぇからな!!」


 「ママ。もし、母さん視点で隼人がこの子に少しでも疎かな行動をしたなと判断したら馬刺しでもなんでも好きなことしていいからそれまでは見守ってあげよう」


 いや、父さん何怖いこと言ってんの!?やるよ!?どんだけ信用してないんだよ!!おい、母さん!!少し嬉しそうか表情してんじゃねぇ!!


 「さて、この子を我が新しい家族として祝福しようか」


 と父さんが言って、ペガサスが新しく犬龍家のメンバーに加わった。

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