第9話
「ごめーん、お待たせ。待った??」
駅の近くにある噴水で待っていると、杏果さんが笑顔で手を振って俺の方に近づいてくる。
そう、今日は以前の謎のやり取りによって、杏果さんと遊ぶ約束をした日曜日だ。数日前からLINEでどこに遊びに行こうか、話し合った結果、遊園地に遊びに行くことになった。
「うぅん、俺もさっき来たとこ。電車がもうすぐ来るから早く行こう」
「うん!!」
くそ。普段は制服の姿しか見てなかったから特に気にならなかったけど、私服の杏果さんってめちゃくちゃ可愛い。今、着てるピンクのワンピースとか凄く似合ってるし………。あと、とてもいい匂いしてる。………、ここまでにしておこう。なんか、俺、変態みたいだ。
そんなことを考えながら、駅のホームに行くと
「あれま」
まぁ、休日だし、朝方というのもあったので当然のように人が沢山いた。いわゆる通勤ラッシュというものだろう。とある有名なジ○リキャラクターのセリフを借りるとしたら、まるで人がゴミのようにいた。
「迷子になりそう」
杏果さんが、少し弱々しい声でそう呟いた。まぁ、当然ちゃ、当然だ。俺もあんま、人が多い場所は苦手だ。だから、杏果さんの気持ちはある程度わかる。
そして、俺はスっと杏果さんに手を差し出し
「迷子になるとめんどいから手でも繋ぐ??」
「え??」
あ、今気づいたけど、俺、めちゃくちゃキモい奴じゃん!!杏果さんが俺みたいなドラゴンとチワワに育てられている謎の環境にいるやつの手なんか繋ぐ訳ねーだろ!!あぁー、やっちまった!!これから先、どうやって過ごせばいいんだよぉ!!
「う、うん!!」
先程まで、無言だった杏果さんは顔を真っ赤にしながら、恐る恐る俺の手を繋いだ。
あ……………、これが女の子の手なんだぁ
感動して、この言葉しか出なかった。
ちょっと涙を流したのはここだけの秘密な
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「杏果さん、大丈夫??」
「うん。なんとか………」
目的の電車が来たので、乗っていた俺達だったが、やはり通勤ラッシュが原因なのか、車内はパンパンだった。なので、人混みの影響もあって杏果さんは俺にほぼ密着している状態だった。顔がとても近い………
「あと、30分ちょいか………、長いな」
スマホであとどれ位駅が離れているか調べている途中に、ふと俺の視界に不自然な光景が映った。
杏果さんの下半身の近くにスマホのような端末機が人混みの中にどさくさに紛れていた。
あ、これはもしや!!と思った俺はその端末機を持っている人を杏果さんをかばいなから探索すると、持っていたのは小太りしていて、ハァハァと気持ち悪い吐息を履いている中年男性だった。
いや、こいつ絶対杏果さんのスカートの中、盗撮してるやん!?は!?許さねぇ!!三途の川に沈めてやる!!
と思った俺はすぐに端末機を握っている方の手首をガシッと掴む。掴まれたおっさんは「あぁん!?」と気持ち悪い声を出す。
「おい、おっさん!!今、この子のスカートの中盗撮してたよな??」
「え!?」
杏果さんが目を丸くして驚きの声を出すが、俺は気にせずにおっさんを睨み続ける。
「ぐひっ!?きゅ、急になんてこと言うんだ!!そんなことしてないぞ!!」
「じゃあ、この端末機は一体なんなんだよ!!」
「それは、その………、あれだ!!」
どれだよ!!もう確信犯決定じゃねぇか!!
『まもなく〜、〇〇駅〜、〇〇駅〜』
「この駅で一旦降りてもらおうか」
「この………クソがぁ!!」
おっさんがそう叫ぶと、ここぞで火事場の馬鹿力というものを発揮させて、そこそこ握力のある俺の手を振りほどき、電車の扉が空いた瞬間に人にぶつかりながらも逃走した。
「ふははははははーーーー!!!逃げればこっちのもんなんだよぉ!!今日の夜のオカズはJKのスカートの中だぜ!!いやっふぉぉぉぉぉい!!楽しみだぁ!!」
おっさんはまるで勝ったかのように歓喜しながら醜く走って行った。あいつ、あの言い方だと、何回か盗撮してるな。これは、捕まえなければならない
「ごめん、杏果さん!!ちょっとここにいて!!あ、駅員さんこの子頼むわ!!」
「え!?」
駅のホームに出ていた俺は一緒にいる杏果さんを通りかかった女性の駅員さんに託し、ダッと走り出した。
人混みの間を華麗に通り過ぎていくと、あっという間に盗撮魔のおっさんの近くまで接近した。どうやら、この人混みの影響であまり動くことが出来なかったらしい。
そして俺はそのままガシッと盗撮魔のおっさんの肩を掴む。
「え??」
「よう、おっさん。盗撮した映像で自慰行為するとはなかなかいい趣味してんな。」
俺は笑顔でそう言うと、盗撮魔のおっさんが殴りかかってきた。
「この糞ガキがぁ!!ぶっ殺してやる!!」
盗撮魔のおっさんはオラオラオラと殴りかかってくるが、俺は余裕で躱す。まだ、この間、停学になった金千歌先輩のパンチの方が迫力はあった。それに対して、なんだこのパンチは。赤ちゃんパンチか??
「悪いな!!おっさん!!俺、人待たせてるから、さっさとあんたをしばくわ!!」
そう殺意を沸かしながら言った俺は迫ってきた腕を交わすと同時にガシッと掴み、そのままくるっと右足を軸にして半回転し、俺の肩に盗撮魔のおっさんを乗せて、勢いよく投げた。いわゆる、一本背負投げというやつだ。
投げられた盗撮魔のおっさんは泡を拭きながらダウンし、動くことは無かった。
そしてそれと同時に何人かの駅員さんと杏果さんがやって来て、盗撮魔のおっさんが倒れているのを見て驚いていた。
「隼人くん!!」
杏果さんが俺に近づいてきて、心配の声をかける。それに対し、俺は髪の毛をガシガシと掻き、微笑みながら
「いやぁ、杏果さんも運が悪いね。盗撮魔にスカートの中を盗撮されるなんて。」
「もぅ、バカぁ」
杏果さんは涙を瞳いっぱいに溜めて俺の胸に飛び込んできて、ポカポカと俺を叩いてきた。
このあとは、盗撮魔のおっさんは駅員さんに確保されて連行された。
俺と杏果さんは事情を説明したあと、普通に解放された。この時、既に昼過ぎの時間帯だった。
「どうする??そのまま遊園地行く??」
俺がそう言うと、杏果さんは首を横に振る。
「もう、遅いよ。今日はやめよう」
「だよねぇ。あのさ、さっきここ近辺を調べてたら、ここの近くに有名なデパートがあるみたいだけどそこ行く?? 」
そう、待ち時間の間に俺はもし遊園地に行かなくなったらと予測してここら辺の事を調べていたのだ。すると、すぐにテレビとかでも有名人が報道しているほどの有名なデパートがあったので、もし遊園地がダメだったらそこに誘ってみようと思っていたのだ。
「あ、私、ここのデパート行ってみたかったんだ!!うん、ここにしよう!!」
杏果さんはパァァァと顔を輝かせて、嬉しそうに声を出した。俺は心の中でガッツポーズをした。
そして、俺と杏果さんは再び手を繋ぎ、デパートの方へと向かった。
「隼人くん、さっきはありがとうね。私を助けてくれて」
杏果さんは可愛らしく微笑みながら俺にお礼を言った。
「ん?いいってことよ。」
多分、今の俺は気持ち悪いぐらいデレデレとしているだろう。しょうがないじゃん!!女の子にそう言われると嬉しくなる年頃なんだよ!!察しろ!!
「とても、かっこよかったよ…………」
ぼそっと杏果さんは呟いた。
「ん?なんか言った??」
「うぅん!!なんも!!さ、早く行こ!!」
杏果さんは顔を真っ赤にしながら走り出し、手を引っ張った。
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