第8話

 え?何この状況………


 母さんとつんさんはじーっとお互いを見つめあって結構の時間が経過した。


 カラカラカラーンと入口のベルが鳴り、お客さんが入室しようとした瞬間、


 「『時間静止(タイムストップ)』」


 母さんが右腕を上げて、静かにそう呟くと、ぽわーんと目の前に大きい時計が出現し、その時計の針が止まると、周りの動きが一気に止まった。


 「静止魔法をやった。これでゆっくりと話せるな。まぁ、座れよ」


 「ありがとうございます。私の店ですけどね」


 そう言って、つんさんは母さんの目の前に塩ラーメンを置き、そのまま席に座った。


 「隼人くん、ごめん。アイスコーヒー入れてきてくれるかな??」


 「は、はい」


 「私はビールな」


 「あるわけねーだろ、馬鹿!!」


 そうツッコミを入れて、俺はつんさんの指示に従い、俺は厨房に入り、アイスコーヒーを3つ入れて、母さん達のところに戻って行き、アイスコーヒーを置いて俺もそのまま席に座った。


 「まさか、こんな所で再開するとはな。」


 「私も同感です。終焉龍(しゅう)さんが、この世界に来てたなんて驚きです」


 「2人はどーゆー関係なんだい??」


 俺が気になっていた事を父さんが2人に聞く、突然、つんさんが言葉を出した。


 「それはこっちにの台詞です。終焉龍(しゅう)さんとはどーゆー関係なんですか??あ、もしかして夕飯のオカズにされる人ですか??」


 餌と勘違いされた父さんは唖然して、言葉が出なかった。ヤバい、気持ちは分からなくもないが、父さんが可愛そすぎて見てられない。


 すると、母さんがムッとして


 「こいつはうちの旦那だよ。」


 「え?バナナ??」


 「違う。旦那だ」


 「え?パナマ??」


 「だ・ん・な!!」


 「え?タンス??」


 「お前、絶対わざとだろ!!」


 ついにプチッと何かが切れた母さんは声を上げる。それに対し、つんさんは平然とした表情で


 「いや、だって終焉龍(しゅう)さんが結婚するなんてありえないでしょう」


 つんさんがケラケラと笑う。もう耐えられなくなった俺は


 「すみません、つんさん。それ、本当なんです。」


 「どうして、君がそう言い切れるんだい??」



 「いや、だって俺、この2人の子供ですから」



 「え…………」



 ここから、しばらく沈黙の時間が経過した。


 「嘘だよね??」


 「本当です」


 「冗談だよね??」


 「冗談じゃないっす」


 「あとから、テッテレーン♪というBGMと共に大きく『ドッキリ大成功』って書かれた看板持ってくるんだよね??」


 「テッテレーン♪は流れませんし、大きく『ドッキリ大成功』と書かれてる看板も持ってきません。本当の話っす」



 「……………really???」



 「……………Yes」



 「oh………………」



 ようやく信じてくれたのか、つんさんはもう何も言ってこなかった。


 「まぁ、隼人(こいつ)は養子だけどな。」


 と、母さんは塩ラーメンをすすりながら補足をつけた。


 「隼人くん、もしかして私の角見えてた??」


 つんさんは角に指を指して俺に聞いてきた。


 「え?あ、はい。バリバリ見えてましたけど」


 そう答えると、つんさんは溜息を吐きながら


 「この角の部分だけは一応、強めの認識阻害の魔法かけてあるんだけどね。そーゆーことか」


 つんさんは納得のいったような表情となった。


 「そーいえば、赤鬼って絶滅したんじゃなかったっけ??」


さっきまでフリーズ状態だった父さんが復活して言葉を呟く。ってことは、つんさんがその赤鬼っていう種族の最後の生き残りってこと!?何があったん!?



 「あぁ、だって私が滅ぼしたからな」



 母さんが塩ラーメンの汁をすすりながらサラッと爆弾発言した。


 いや、主犯はあんたかい!!何やらかしてんだ、この人は!!しかも、目の前に最後の生き残りの赤鬼さんがいるっていうのに!!


 「おい、バカ息子。なんか変なこと考えてるかも知れないけど、頼んだのは赤鬼(つん)だからな」


 えぇーーーーー!?黒幕はつんさんなん!?何考えんの!?この人は!?


 「いやぁ、あの時の私は狂ってたね。ほら、なんか種族の最後の生き残りってなんか憧れるじゃん??だからたまたま知り合った終焉龍(しゅう)さんに頼んで私以外の赤鬼をぶっ殺してもらったの」


 いや、怖ぇよ!!狂ってたというか、もはやもうサイコパスな考えだよ!!


 「その後は色々あって別れちゃったけど、こうして会えて嬉しいですよ」


 「あぁ、私もだ。」


 母さんとつんさんは微笑みながらガシッと握手をした。


 すると、時計の針が再び動き出し、周りが動き始めた。


 つんさんは素早く席を立ち、俺に声をかける。


 「さて、隼人くん、我々は仕事に戻ろうか」


 そう言って、先程入って来たお客さんのところに行った。


 「う、うす!!」


 今日は集中してやれる気がしないな。


 「おい、ハヤト!!」


 母さんが俺に声をかける。


 「何なんだよ。レジならあっちだぞ??」


 すると、母さんは真顔でメニュー表を広げ指を指し、


 「このストロベリーワッフル1つ。あとコーヒーお代わりな」


 「いや、もう帰れよ」とは言えなかったので、苦笑いしながら俺は


 「はいはい、少々お待ちくださいね」


 と言って、厨房の方へと向かった。

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