第3話

 「隼人〜!ちょっと来て〜」


 日曜日の朝、自分の部屋でゴロゴロとしてゲームをやっていた俺は母さんに呼ばれた。


 「今ポケ◯ンで厳選してる途中だから嫌だ」


 「あのゲームって中々残酷だよな。折角親が腹を痛めて産んだ子供達を己の強さを満たすためだけに利用し、役に立たなかったらゴミのように捨てるんだからな。お前の本当の両親と一緒のことしてるぞ??」


 「マジでそんなこと言うのやめろよ!!やる気なくなっちゃうだろうが!!てか、何だよ」


 俺はゲームを一時中断にして、母さんのところにまでダラダラと進んだ。母さんの姿を見た俺は目を丸くした。珍しく、母さんがお洒落なワンピースを身につけていた。しかも、普段はしないのに、化粧もしている。相変わらず、お子様感はあるが、上品な感じがしていた。そして、そんな上品な母さんの手にはいつも買い物に使っているエコバックがあった。


 「買い物に行ってくれないか?私、今日ちょっと用事があって行けないんだよ」


 「別にいいけど珍しいな。母さんがそんなお洒落な格好するなんて。」


 「ちょっとな……….。昔の友人に会ってくるんだよ。」


 友人?え?嘘!母さん今、友人って言った?言ったよね??


 「あんたに友人っていうものがいたのか」


 「今謝れば、左手1本で許してやるぞ」


 「冗談だよ………。本気にすんなって」


 母さんは魔法ですぐに治せるからという理由で本当に軽い気持ちで骨とかポキッて折ってくるから恐ろしい。


 「んで、何を買ってこれば??」


 「このメモに全て書いておいたから、これ見て買ってきて」


 「うい、了解。」


 俺は母さんに1万円札を受け取り、出かける準備をし始める。


 「あと、今日、私帰ってこれないから晩御飯はパパと一緒に食べてね。明日には戻ってくるから」


 「その友人って、人間??それとも、ドラゴン??」


 「ドラゴンだよ。昔、仲良かった雌のドラゴンの友達なんだ」


 「へぇ、案外、ドラゴンってこの世界で生活してんだな。」


 「ドラゴン関係なく、他の種族も人間に化けて生活しているよ。この地域だけでも、ざっと50体はいるぞ??」


 「50体!?多すぎんか!?」


 「それほど、この世界の居心地がいいって事なんだろ。誇れ誇れ」


 「なんで、俺が誇るんだよ。もういいわ、なんかお土産買ってきて。それじゃあ」


 俺はいつも外出する時につけている帽子を被って、外に出ようとした。背後から「気をつけろよ」と母さんの声が聞こえたので「はいよー」と言って玄関のドアを開けた。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「これで、最後かな??」


 あれから、俺はメモに書いてある商品を買い続け、最後の目的であるドッグフードを手にした。


 その前には牛肉、タマゴ、牛乳、ニンジン、キャベツにカレー粉、あと洗剤にトイレットペーパーに避妊用具…………っておぉい!!避妊用具!?息子になんてもん買わせてんだよ!!あの母親は何を考えてんだ!!レジで女の定員さんに「頑張ってください」って応援されちゃっただろ!!


 そんな感じで、俺は怒りの感情を込めながら、ドッグフードをエコバッグに入れて、家を目指す。当然、色々なものを入れているので重たい。近場であるが、家まで遠く感じてしまう。


 「ちょっと休憩しよう………」


 帰り道にある公園に寄り、日陰のベンチに腰を下ろした。流石は日曜日の昼間すぎであって、人が賑やかった。駆けっこをしている子供たちに、それを穏やかに見守る老人、そしてイチャイチャさているカップルなどがいた。


 「ん?」


 座ってスマホを弄りながら、休憩していたら、母さんからLINEが来た。こう見えて、母さんと父さんは現代の電子機器を使いこなしているのだ。


 母さんとのトーク画面を開くと


 『友達一緒なう』

 

 という現代チックなメッセージと共に、写真が送られていた。写真に写っていたのは、ロリ姿の母さんととても美人でグラマー体型のお姉さんの自撮りのツーショット写真だった。


 『楽しそうだね。こっちは買い物終わったよ』


 と、返信すると、即既読が着き


 『避妊用具ちゃんと買った??ちゃんと0.2のやつだぞ??』と返信が来た。


 いや、確認するとこそこ!?どんだけ欲求不満なんだよ!!この人妻ドラゴンは!!


 俺ははぁーと溜息をつきながら買い物袋を持って重たい腰を上げ、家に向かおうとしながらスマホを手にし、父さんのトーク画面を開き


 『今晩、何にする??』


 と、連絡してみた。すると、仕事中のはずなのに既読がついた。そして、


 『ドッグフード』


 と、連絡が来た。チワワだし、当然ちゃあ、当然だが、ある意味殺意しか湧かなかった。


 「はぁ〜、今日はオムライスにするか」


 俺は疲れ気味でそう呟いて、我が家に向かった。

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