第2話
前回と続けて突然の事だが、俺は両親の正体を知って数年が経ち、高校生となった。
そして、今なお両親は俺に正体を明かした後は、普通に自分の元の姿を晒して生活するようになった。
「いやー、人間そのものの姿で過ごしていると疲れちまうんだよなー」
母さんはそう言って、家の中では羽根と尻尾を生やした状態で過ごすようになった。最初の頃は隣とかをすれ違う時に羽根に当たったり、尻尾を踏んでしまうことがあったりして、ボコボコにされてきたが、今ではなんとか慣れることに成功した。
だけど、正体を知ったしても、やはり料理中に火加減が悪かったからって火を吹くのはやめて頂きたい。衛生的な面でOUTな気がする
そして、父さんに至っては家にいる間はずっとチワワの姿になって過ごすようになった。この姿の方が馴染みもあるし動きやすいらしい。
だが、仕事とかがある日だと母さんに頼んで魔法をかけてもらい、いつも見ている人間の姿になり、準備してから仕事に向かっている。こう見えて父さんは銀行員の部長を務めているのだ。所詮はチワワなのに……….。
そして2人の仲は昔と変わらず、暑苦しくイチャイチャしている。まぁ、ドラゴンとチワワという異様な組み合わせだが、上手くやっていけば愛に種族なんて関係ないと俺は思うし、母さんによると、多種族結婚はなかなか珍しいものでも無いらしい。
母さんの知り合いの雄のドラゴンも雌のペガサスと駆け落ちして行方不明になったという話を以前に聞いたことがある。ドラゴンとペガサスだったらなんかこう………ファンタジー感があって良いと思うが、うちの場合はドラゴンとチワワだからなぁ。ファンタジー感もクソもないんだが…………。
しかも、ここだけの話で夜の営みもちゃんと行なっているように見える。朝起きて、2人の寝室に入ってみると、たまにチワワの姿である父さんがベットの上で干からびて死にかけているのに対して母さんはツヤツヤ肌でとても満足そうな表情で着替えなどを行っている。
いつか、弟か妹ができるのかもな。種族的に不可能だと思うけどね。
「ん?隼人、何で私の事をずっと見つめてるんだ?お前は私の事が好きなのか?」
おっと、掃除している母さんを見つめながら色々と語っていたら何か冗談を言いだしたぞぉ〜。ロリ体型の上に300歳超えとかありえないパラメータを持つあんたの何処に需要があると?笑わせないでくれ。と、心の中で散々と呟く。だって、声に出したら殺されるし。
「いや、言ってなかったけど私、人の心の声聞こえるからな??」
「え!?」
「お前、分かってるよな??」
母さんの周りゴゴゴという効果音が出てきそうなオーラを身に纏いながら、ポキポキと指を鳴らして俺の方に近づいて来る。
「……….ごめんなさい!!1ヶ月間、トイレ掃除するんで許して下さい!!お母様、どうかお願いします!!」
すぐに俺はスライディング土下座をして母に謝った。母はじっと見たあと、何回かうなづき、指で『もう分かったから自分の部屋戻りな』という仕草をしたので、俺はパァァと明るくなって立ち上がって振り返った瞬間に母さんに思いっきりドロップキックされて、吹っ飛んだ
「あと、パパのお風呂も追加な」
母さんはそう言って、ふふんと満足そうな顔になって買い物に出かけに行った。
あの人は鬼か!!……….あ、ドラゴンだった!!
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「ははは!!お前、母さんの前でそんなこと思ったのか!!ダメじゃないか!!」
「うるさいなぁ!!タワシで擦るぞ」
俺は苛立ちの声を上げながら、チワワである父さんを風呂場で洗っていた。専用のスポンジで父さんをゴシゴシと泡で擦ると、気持ちよさそうな表情となる。
「あー、気持ちいいなぁ。でも、母さんには負けるかな??」
「だったら母さんにやってもらえればよかったじゃん!!なんで俺が」
「お前が余計なことしたからだろう。ほら、もっと強くして!!」
「ったく…………こうか??」
ちょっとだけ強く擦ってみた。
「痛い痛い!!ハゲるハゲる!!もっと優しく!!」
「こうか??」
今度は弱く擦ってみる。
「今度は弱すぎる!!もっとデリケートに扱え!!」
「あんた、めんどくさいな!!」
「例えるならそう、生まれたての赤ちゃんを優しく抱いてあげる感じでやるんだ!」
「例え下手くそか!!そもそも、俺は赤ちゃん抱いたこと1回もねぇ!!」
「そうか、じゃあ近いうちに抱かせてやるよ。それにはまず母さんを抱かないとな」
「息子の目の前で卑猥な発言やめろ!!あと、ドヤ顔ムカつく!!」
そう言って、俺は泡だらけの手で父さんの顔を擦る。父さんは「ぐわぁぁぁ!!」と悲鳴を上げる。
その後、泡を落としてあげ、父さんを湯船に入れる。とは言っても、いつも入っている風呂だと父さんには大きすぎるので、湯が入っている小さい桶に入ってもらっている。ぐったりとしている姿が可愛らしいのでTwitterにあげればきっとバズるだろう。
「ところで父さんってどこで母さんに出会ったの??」
「どうした??急に??」
父さんはキョトンとしてこちらの方を見た。
「父さんはここの世界の生物だろ??異世界から来た母さんとどこであったか、前から気になってさ」
「あー、そういうことね。母さんと出会ったのは25年前。俺が生後2ヶ月ぐらいの時かな」
「25年!?あんた、人間年齢だとしたら馬鹿高ぇじゃん!!」
「そんなもん、母さんの魔法でどうにかしてるさ。」
「しかも、生後2か月て………。子犬の時に母さんと会ったんか??」
「そうだよ。僕は生まれた時から身体が弱くてね。すぐに飼い主に捨てられたんだ。その時に母さんと出会ったんだ。」
父さんは「懐かしいなぁ」と言って、嬉しそうな表情となった瞬間、
突然、バァンッと風呂場のドアが開き、全裸の母さんが乱入してきた
「「母さん!?」」
「よう!!お前ら!!中々面白そうな会話してんじゃねぇか!!母さんも混ぜろ!!」
母さんはニヤニヤと不気味な笑みをしている。俺は「冗談じゃない」と、一言呟いて風呂場を出ようとした。
「んだよ!もう出るのか??昔みたいに仲良く3人で入ろうぜ」
「俺はもう高校生だ!!父さんはともかく、母さんとは一緒に入りたくない!!」
「童貞の癖に一丁前だな。そんなんだから彼女できねぇんだよ!!」
「そういうこと言うのやめてくれる!?」
俺と母さんのやり取りを見て、父さんはあははと笑っていた。笑ってないで、フォローしろよ!!このチワワが!!
こんな感じで俺と母さんがぎゃあぎゃあ騒いでいると、近くに住んでいるおばさんが
「今日も賑やかねぇ。犬龍さん家は………」
と言って、ニコニコとしながらお茶をすすっていたのを俺達家族は知らない。
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