6:人間

 【発掘レンガ】


8490608 インドネシア海域調査 

     第8調査船 船長 土佐


6月8日、0854、小さな島でヒューマンの中型潜水艦を発見。

潜水艦は完全に陸に乗り上げている。

外部に損傷見当たらず。

潜水艦の周囲は南国特有の樹木が生い茂っている。


1300、潜水艦の横の木に登り、上部甲板に飛び移る作戦を立案。

古木曹長が成功し、潜水艦の上からロープを垂らすことが出来た。

上部ハッチはロックされておらず開けることが出来た。

のち、縄梯子により上甲板に潜水艦調査隊選抜6名集合。


1400、潜入調査開始。

内部は浸水無し。完全な暗闇。懐中電灯使用。人の気配なし。死体も無し。

内部に魚雷多数発見。しかし外に運び出す手段無し。魚雷発射管作動せず。

内部に航海日誌のようなものは見当たらず。


船員の寝台調査。寝台横の箱に船員の紙の日記を発見。


以下、内容を記す。船員の字が汚いのと、私の拙い英語能力の為、正確ではない。



  私たちはハワイを訪問した。生存者を確認。

  ハワイは混乱だった。とても危険。

  殺し、銃、死体が沢山。

  理由は食料無し。

  とても不衛生。コレラが流行、増える死人。

  私たちは逃げた。ハワイを離れた。


  潜水艦は動かない。エンジンは動かない。

  沈んではいけない。

  絶対に浮上できない。再び浮上できない。

  嵐に遭遇。強い嵐。

  陸に乗る。岩の上に行く。海には戻れない。

  私たちはこの島で生きる。女がいない。

  私たちは歳をとって死ぬ。

  子供は生まれない。命を未来に繋げない。


  私は思い出す。

  食料戦争。世界戦争。アメリカが勝った。

  しかしあのクソ野郎。

  小さい国、クソ野郎な国。核兵器発射。

  たくさんたくさん発射。

  それは高い空で爆発。大地で爆発。

  人々は死んだ。電気は死んだ。

  生命線は死んだ。

  原発停止。たぶんメルト下降。


  アメリカは復讐、反撃した。

  アメリカのミサイル発射。すべて発射。

  核兵器を持つ国。すべての国に発射。


  勝つのはアメリカ。最後に勝つのはアメリカ。

  空気は高い放射線。

  陸は生きられない。雨も危険。

  食料不足の原因、5年の寒さは終わっていない。

  世界は終わり。


  私たちは暖かい島にいる。この島は楽園。

  最後の長い休暇。

  この島で生きる。しかし男だけ。


拙い英語能力で申し訳ない。内容はだいたい合っているはずである。

原文は厳重に密閉して持ち帰る。


何か所か、不明な文章があった。


「スマートな電話が使えない」

「インター網が使えない」

「雲に繋がらない」

「雲が使えない」


意味は不明。




  《人間》



 彼ら2人は今日も一緒である。

 仕事終わりに彼らは、建設現場近くに新しくオープンした定食屋に来ていた。外の看板には「スフィンクス食堂」と書かれている。


 我々の食生活はヒューマンと大きく変わらない、と思っている。ヒューマンの映画の影響で、見た目はヒューマンの料理と同じように見える。


 我々も雑食だ。体の為にはビタミンバランスが大切だ。

 小麦も米も地上で作っているし、野菜も作っている。サラダも食べる。

 大型の哺乳類は絶滅してしまったから牛や豚はいないが、鳥は食べる。

 カエルや虫を唐揚げにすることも多い。


 我々は食用の大型の爬虫類、ワニトカゲという数種類の家畜を海沿いで量産している。ワニトカゲは体表面の色によって味や食感が違う。緑と赤と黄色と黒とシャイニングパープルとピンクがいる。

 ヒューマンの時代にはワニトカゲは存在しなかったらしい。ワニトカゲはワニやトカゲとは違う。足が8本ある。うまいもも肉が8本もあるのだ。ありがたいことだ。

 ワニトカゲのエサは魚がメインだ。海沿いがいい。

 ワニトカゲの肉は、そのままステーキにしたり、乾燥肉を煮物に入れたり、焼きそばに入れたり、燻製にしたりする。


 ただ、ヒューマンが食べていたラーメンというのは無い。麺をすする、というのが我々には出来ない。

 ヒューマンも出来る民族と出来ない民族がいたらしい。



 ワニトカゲの唐揚げ定食を食べながら、ツキモトとオオタは話していた。

「この潜水艦調査のレンガは貴重だよ。」オオタが言う。

「レンガ人が小さな島で発見したヒューマンの潜水艦だな。」ツキモトが答える。

「ヒューマンの滅亡までの出来事はだいたい分かっているが、この潜水艦乗りは最後のヒューマンだった可能性がある。」オオタが言う。


「ヒューマン滅亡までのプロセスは、だいたいどれも同じようなことが書かれているな。」ツキモトが言う。


「そうだ。」オオタが説明する。「まず氷河期の始まりの天候不順が何年も続く、そして食料不足が世界を襲う、そこで食料の奪い合いが始まり世界が混乱する。」

「世界各地で紛争が始まる。」ツキモトが言う。


「その紛争を鎮圧するために軍事国家が動く、そして世界は秩序を取り戻す。」オオタが言う。


「だが食料は無い。」ツキモトが言う。

「世界中で餓死者が出続ける中で、大陸間弾道弾を持つ小さな国が軍事国家を核攻撃する。」オオタが言う。

「何発も。」ツキモトが言う。


「そう、何発も撃つ。」オオタが言う。「それは成層圏で爆発し、電磁パルス攻撃になる。」

「地上にも落ちて軍事国家は大量の死者が出る。」ツキモトが言う。


「電子機器に深刻なダメージを追って電気が止まる。」オオタが言う。「核分裂の発電所は復旧不可能なダメージを追う。」

「国家として深刻なダメージを負った軍事国家は、こんな小国に負けるわけにはいかないから撃ち返す。」ツキモトが言う。


「隙をついて他の国が攻撃してくる可能性を考慮して、核兵器を持つ全ての国を攻撃した。」オオタが言う。


「地上攻撃と電磁パルス攻撃両方だな。」ツキモトが言う。

「世界中の電子機器が壊れた。」オオタが言う。


「勝ち負けで言えば、軍事国家は負けなかったわけだ。」ツキモトが言う。

「世界を滅ぼして勝ちも負けも無いだろうに。」オオタが言う。


「生き残った者はいなかったのかね。」ツキモトが言う。

「さあねえ、我々のように地下で生活してる者がいたら、放射能の影響から逃げて生き残っていたかもしれないが。」オオタが言う。


「食料を手に入れないといけないからなあ。」ツキモトが言う。

「この潜水艦乗りみたいに、海の島なら魚が確保出来るけどな。」オオタが言う。


「この前2人で見たヒューマンの映画に、毒ガスが出てきただろ。」ツキモトが言った。

「冷凍保存してたやつな。」オオタが言った。

「あれが本当にあったら、電気が切れて解凍された毒ガスは外に放出されるかな。」ツキモトが言う。

「爆発するかもな。」オオタが言う。


「今の我々の時代のウイルスや菌が強いのは、ヒューマンのせいかもな。」ツキモトが言う。

「ビースターが影響を受けていないのを見ると、微妙だな。」オオタが言う。

「ああ、そうか。」ツキモトが言った。

「でも放射能で、変異を繰り返した可能性は高いかもな。」オオタが言った。




 

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