一人部屋にて ②

性懲りも無く部屋を訪ねて来た久松さんに、ちょっと聞いて見たいことがありました。今彼は浪花さんが残していった数冊の本のうち一冊を片手に壁にもたれています。

「で、いつ気付いた?」

「敬語もやめたのか。帰った後気をつけろよ。」

そう言って本を置くと、ちょっと移動して座椅子に腰かけました。明らかに久松さんが治っていませんが。

「年齢詐称に気付いたの、割とすぐだぞ。初めてこの部屋に泊まった朝、お前の取り繕い方が明らかに小学生じゃなかった。それから、浪花に対する甘え方がな・・・」

「え、嘘でしょ!?嘘ですよね?そこだけは間違わないようにしてたのに。だって浪花さん、全く違和感持ってませんでしたよ?それは絶対です。」

「あのな、それはあいつがお前を、「小5くらいの子ども」じゃなくて、「小学生の可愛い子」って見てたからだ。今時の小学生はな、特に高学年ならあんな風に「子供っぽい」ことはあんまりしない。浪花から聞いたぞ、したって。どこの世界に毎晩ご所望になる賢い小5がいるんだ?」

「います!絶対いますって。少なくともここに!」

「・・・・・これで年上か。」

失礼な奴め。憎めないですが全く口さがないったらありません。

「そういや西條はここ出た後どうするんだ?」

「もちろん、浪花さんの家に居候しますよ。結構居心地いいんです。」

一人暮らしにしては広い家ですし、二部屋ほど空きがあるんですよね。とすれば、浪花さんは以前と同じように自分の部屋、それからあとの四人は二つに分かれて寝ることになりますかね?

「・・・わかってるのか。そうすると自動的に俺や神田、それから八重川さんも住み着くことになるぞ。」

「それは勿論、承知の上です。僕にとってはその方が都合がいいですし。」

「・・・・・本当にいいのか?」

「うるさいなあ、こう見えてもちゃんと大人なんですよ!お酒だって飲めますし、そう、運転免許も取れます!」

「・・・だから、もうあきらめようって?」

あっさりスルーしないでくださいよ。

「誰がそんなこと言いましたか?諦めたりしませんよ。だからこそ、一緒に住むんです。がいたら抑止力にもなりますし、浪花さんがうっかり地雷を踏んでも僕がちゃっちゃと片付けますから。」

「うわ、悪童。」

「だから子どもじゃないんですって。」

久松さんは呆れたような顔をしてこちらを見てるんですが、最近、彼の思考が読み難いのはなぜでしょう。

「おまえの好きにすればいいけど、 そのうち気付くだろ。」

「は?」

「いいや、なんでも。」

久松君は楽しげに笑って僕の頭を撫でてきました。一応年上なんですけどね。

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