10.座席ぎめあれこれ

遠足バスの座席決め。・・・憂鬱だったあの頃ー、とかって微妙に浮れていたんだが。・・・八重川さんと深琴君が、決闘で決めようとか言い出した。

いやいや、そこはじゃんけんで穏便に済ませましょうよ。それに、用もないのに久松まで喧嘩売ってくるし。結局は橋下さんがくじでちゃっちゃ決めてくれたわけだが・・・行き、久松と。帰り、やっさんと。

・・・バスが血塗れにならなきゃいいですけどね。深琴くんとやっさんが隣同士というのもかなり心配。

「いいですか、八重川さん!あなたの好きにはさせませんから!」

「いい度胸だ・・・」

と、言いつつも。八重川さんは本格的に女子が苦手らしく、お姉様方を侍らせておられる深琴くんと距離を取っている。

「西条も大人気ないな・・・」

それは同感だな。見てるしかできないのをいいことに、好きでもないクッキーをさも美味しそうに食べてらっしゃる。頭がいいとはいえ子どもなんだなあと改めて思う。



「ダウト!」

さて、バスの中は血まみれかと言いますと、そうでもない。血涙を流している人はおられるが。

「お前ら、これ何かわかってるのか?でたらめに出していいゲームじゃないんだぞ?」

八重川さん、正直者は馬鹿を見るんですよ。

結局戦闘不可避を悟った橋下さんが気を利かせ、トランプやウノをもたらしてくれたのだ。これで無事にたどり着けそうな予感。

「ダウト!」

「あ・・・」

ほくそ笑む八重川さん。でもまだ場に2枚しかないのに・・・嬉しそうだから良いとしよう。

「これ、エンドレスですね。」

「まだだ、まだいける。」

出発から一時間、やっとこの不毛なゲームを放棄することに決めた時、目的地に着いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る