18.宣言

神田君C組入りのお祝いも兼ねて、再びの宴会。主に橋下さんと蒲原さんがお祭り好きでね。差し入れの食材も含めて調理し、いつものことながら作りすぎてしまう俺。この日は蒲原さんと松永さんが助っ人に入ってくれた。

あ、なぜ蒲原さんが料理を習おうと思ったかといえば。

もしその先生に雇う能力がなかったり、そもそも未成年だった場合に、他で手に職つけたほうがよさそうという結論に達したらしい。

「俺はできることならなんでもするう!!」

叫びながらキャベツの千切り。とことん感覚がかぶるのが。

しかしまな板の上に金属の板載せておいて本当によかったよ。キャベツと一緒に千切りになるところだった。

「浪花、なにか手伝うか?」

「あ、八重川さん。それじゃあ、机の上のお皿二つ、運んでもらえますか。」

「お前、余ったら責任食いだぞ?」

「わかってるよ久松!茶でもジュースでも準備しろ!」

そうだ。言い忘れていた。ここの購買、寮父さんお手製弁当より他、既製品は置かれていない。清涼飲料水と呼ばれるものはもちろん、ペットボトルの御茶、缶コーヒーなどもちろんなく、ジュースもアイスも原料から作らなければない。アイスクリームメーカーはあるからね。そのかわりプロテインとかその手のものはそこそこある。ただし、先生から直に買い、飲む量や時間などまで指導されるが。

まあカップ麺なんか論外な。つまり、どこまでも健康第一の徹底した学校ということだ。

「浪花にはほんと、感謝してるんだ!」

ちょうど松永さんが外して、二人きりになったとき、おもむろに蒲原さんが何十回目かのお礼を言ってきた。

「え?いや・・・」

「そっちじゃなくて、やっさんの方。」

蒲原さんに感謝されるようなこと、作家さん以外で何かやったか?

「俺がここに来たての時、八重川はもっと近寄りがたい雰囲気だったし、もう本当刃物みたいだったんだ 。外側にも、内側にもな。くろべーと橋下さんから、それでもまだ丸くなった方ときいたときには魂消たんだ。人と話すのも嫌、人に見られるのも嫌、人に触られるのはもっと嫌、そんな自分も嫌、そんなで、Cに沈殿してたから。あいつは元々運動神経もいいし動体視力もいいから、すぐに山も制覇しちゃったんだけど、他がからっきしだめでな。対人の方は橋下さんのおかげもあって改善してはきてたけど、結局根本的に変わらなかったんだ!それがあれから・・・なんか普通になったというか、割と自然に人と話せてるというか。たぶん浪花のおかげかな、と思って。」

まだ笑っているところは見たことがないが、確かに表情が柔らかくなった気がする。それが俺のおかげかどうかは知らないが、そんなやっさんは見ていて安心するのは確かだ。

「何の話してたんだ?」

やっさん登場。2人揃ってにやにややってたら普通に殴られました。まったく、手より口で、ですよ ?いや、筋肉か。

その後皆んなでどんちゃんやり、松永さんが再来月の12月卒業を目標に掲げると、蒲原さんはとにかく来月中にC離脱の宣言。それに続いて、なんと橋下さん、元日卒業を目指す旨を発表、場が沸騰したところで、

「何年の、かは言ってないよー。」

と、緩い発言。

まあ俺も、ということで再来月離脱を宣言すると、久松とやっさんもそれに乗っかり、先輩と勇子さんは苦笑しておられた。

なぜ俺が自分に間一月のC組猶予を設けたかといえば、ここでしっかり鍛え上げたほうが、その後が有利になる旨を松永さんから聞いていたからだ。

そして宴が果てた頃。担任坂本、電話が繋がっていると先輩に。各々気にはしつつ、部屋へ戻っていった。

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