9.趣味は人の勝手
翌朝。普通に3時半起床・・・深琴君が俺にしがみついて眠っていました。それもそのはず、奴が深琴君の場所にひっくり返っていたのだから。
この幸運を胸に収めつつ念のため三人分の朝食の下拵えをし、シャワーを浴びた。
あ、ちなみになぜ運動禁止の日曜でさえこの時間に起きるかと言えば、その方が体に負担がかからないの実証済みだからさ!
中野君のが昼か夕方になるとすると、深琴君の勉強と俺の復習そして予習がちょうど終わるくらいから準備はした方がよさそうだ。
「おはようございます、あ、そうでした。久松さんがいたんですね。」
早起きは三文の徳、深琴くんのこの寝起きが可愛らしいのだ。目をこすりながらね、ちょっと寝癖のついた頭を気にする仕草がね。もう俺、ショタコンの汚名も辞さない・・・いや、すでに沼の中か。
「白湯かホットミルクか、飲む?」
「お白湯をお願いします。」
そしてまだ寝ぼけているこの子の柔らかなふにゃっとした笑顔。昇天の朝。
とりあえず彼が飲んでいる間に復習、そして予習へ・・・
気付く。もうすぐ歴史系二つは第二次大戦を終了見込み、数学はあと数列と確率分布しか残っていない。他も大概そんなもので、ついていけなかったのは確かに当然と言えた。しかし!ここで振り落とされるわけにはいかんのだ。天使の純潔を守るために!!
久松起床四時五十分。普段からそうなんだろうな。
「あ?・・・なんでお前俺の部屋・・・ん?子ども・・・・・」
「おはようございます。あの、朝食はどうされるんですか。」
深琴君が華麗すぎる。まだきょとんとした顔の久松はやっと状況を把握したもよう。
「おまえまさか、子持ちだったのか?」
「わー、お父さん!」
深琴くん、それを悪ノリというのだ。一体どうやったらこんな可愛い子が前髪おばけから生まれるんだ?
「こら、まったく・・・お前も大概だ!俺高校生だし、普通にありえないだろ。」
「それじゃあこいつは?・・・お前まさか」
「お父さん公認の誘拐犯さんです。あ、だから誘拐っておかしいですね。戻されるの嫌ですし・・・利害の一致した・・・あ、お宿、とか?」
みーこーとーくーん!ばかばか、正直に言わないで!
「ありえねぇ・・・おまえの趣味が・・・理解の範疇を超えている。」
突っ込むとこそこじゃないだろ。
「他にいうことないのかよ。」
「は?・・・まあそいつおまえに懐いてるみたいだし。お前みたいなやつが変なことできると思えないからな。それに、ここにいるのそいつのためだろ。別に言うことなんか何もないよ。親公認なら尚更だろ。」
こいつはいいやつなのか?むかつくけど。
「それに鍵。出ようと思えば出られるし、昨日とか特に助けを呼ぶでもなかったしな。」
「当然です!浪花さんは未来の僕の守護神なんですから。それに浪花さん に捨てられたらぼく生きていけません!」
久々にキューピット登場。しかも強力な二つの矢でバシュッと。
脳天に机をいただいてわだわだしていると、どうも久松の中で洗脳説が出来上がっていたのが見事に崩れ去ったようでした。
「それよりお前背中・・・」
上着るの面倒でそのままになっていた俺の背中・・・多分傷だらけでしょうね。治癒能力が高いといっても、跡が残らないわけじゃないので。
「 ・・・刃物の跡があるの、気のせいじゃないよな。」
「ああ。・・・まあすぐに治るからだろうね。ストレス発散にはいいんだろ。」
「前髪、それも一因か?」
こっくり頷くと、ちょっと神妙な顔になったやつはにやりと笑って俺の頭をバシッと叩いた。
「ま、がんばれよ・・・俺には勝てないだろうがな。」
「は?今度のテストもC組への試験も、 お前には負けたくないんだよっ!俺を甘く見たこと、後悔させてやる!」
「なら、俺のライバルとしてお前にはもうちょい自信もって欲しいものだな、その子のためにも。」
それから朝食を三人で食べ、取り敢えず例の計画がいつのことかを聞きに行くことになった。
しかしなぜかライバル宣言をされ、自信を持てと言われた俺・・・ちょっと待て。確かに、すごいなとか、負けたくないなとか思うやつが本気でだめだめとか思ってたらむかつくよな。・・・よくわからん基準で宣言はされたが、確かにそんな風に言われるのは、それもバカみたいな持久力を誇るやつに言われるのはちょっと誇らしい。
だからってジシン・・・つくように努力しよう!それに深琴くんは俺を選んでくれたんだよな?それも否定しそうな感情は切り捨てるか。
「おーぃくにちゃん!独り寝寂しかったぞ!」
廊下に出ようとしたところに、筋肉マッチョ蒲原虎徹久松同室と鉢合わせた・・・分厚い。背は低めだが、その代わりこの厚み。厚切りだ。
「あれ、もしかしてその子えっと・・・まさきゅん!とイチャラブだったりするの?」
ま、まさきゅん・・・岩みたいな顔したやつから出てくる言葉とは思えない。ある意味破壊力満載だ、腹を壊しそうなほうのな。それに・・・そもそも似合ってないぞ、 俺に!
「そんなわけないだろ。俺にその趣味はない!お願いだから俺とこいつで妄想膨らますのだけはやめてくれ。」
「えー、身長差的にも普段からのバシバシに意識しあってる感じとかも、くろべーとは結構いいカップリングって話になってんだけどなー。」
くろべーって。ひょっとして昨日来てた黒部さんですか。漆黒の闇を纏いし・・・みたいなオーラ放ってたからちょっと意外だなぁ。
「どうしてよりによってこいつと・・・」
「それじゃあまさか、夜とか何もなかったとか言うわけ?あ、もしかしてまさきゅんがこっそり抱きついちゃったりしたのにムラムラしてうっかり・・・とかさ。」
「ありえないから!」
こいつとはもるとか。しかしこんなに感覚が被るのも珍しい。
「まあ気にすんなって。俺は特にBLと呼ばれる作品が好きってだけだからさっ。そう、腐男子と呼ばれそうなあれだ。くろべーは単なるオタク。」
闇の深いジャンルなのだとか力説しながら、ショタ話まで出てくるのだからもうどう反応していいやら。しかも蒲原さんに気づかれないように久松はボソッと、
「実践するなよ。」
とか言ってくるし。でもまあ、やっさんこと八重川さんと橋下さんの部屋へ連れてきてくれたのはありがたいが。
「朝早いんだねー、おはよー。」
いつでも眠そうだな、この人は。
「ああ、あれの準備かー。昼から夕方・・・六時くらいまで持つぶんくらい作ってくれると嬉しいなー。たぶんキッチンは君の個人部屋が一番広いから、持ち運びは皆んなで手伝うよ。あ、それと、やっさん甲殻類アレルギーで、それから・・・くろりんはニンニクだめ。あの人吸血鬼設定だから、一応ね。でもやっさんのもそこまでひどいやつじゃないし、一緒に調理さえしなければ問題ないよー。ちょっと液とんじゃったーくらいじゃなんともないみたいだから。ドレッシングとかは気を付けてあげてねー。それくらいかな。」
「俺も参加いいか?あ、なんならCの残留組みんな呼ぼう!」
残留?もしかして、やっさんとかもOver二十だったりするのか?そんな風には見えないんだが。
「それいーんじゃない?ナイスてっちゃん。それにみんな集めても、えーっと・・・やっさん、くろりん、俺、ゆーちゃん、かっちゃん、それから・・・あ、こてるんもそう。それからもう一人・・・」「勝手に作るな。怖いだろ!」
やっさん登場。六人が残留組のようです。
「なあお前、そんな大人数の食事用意できるのか?自分も食べるだろ。」
「できないことは引き受けたりしない!俺の自炊歴バカにするなよ?」
久松氏よ、考えても見よ、まだ昼までにかなり時間があるのだ、ちゃっちゃやれば相当作れるのだよ。
「でもなんかいじめてるみたいだ・・・俺たちもできること手伝うから、安心せいっ!」
蒲原さん力強すぎ・・・
手伝いは任せろと言われたが、取り敢えずは各々部屋に戻ることになった。今のうちに下準備だけはしておくとしよう。
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