7.馬鹿でしょうか
さて、あれから2週間。果てしなく続くと思われた筋肉痛も今では軽い違和感程度になって、朝のトレーニングもほとんどへばらずに済むようになった。相変わらず久松とは反目しあっているような感じだが、他の連中とはうまくやっている、他でもない、この俺が!場所が山だから良いのだろうか、人がいいからだろうか。でも嬉しいことに変わりはない。
そう、忘れるところだった。中野と神田、出てきたと思ったら顔面蒼白で俺たちに、脱走だけはするなと警告してきたのだった。それが二週間前。しかし神田は繰り返した。中野は心底うんざりした様子で夕方の道場で報告し、坂本も安藤もため息まじりに目配せしあって、地獄の門番は今度は安藤さんがすることになった。
「あいつ、正真正銘バカだ。」
ぽそっと呟く中野くん。色々聞きたい気はするが遠慮しておこう。
それから、この一週間後に学力のテストがあり、教室の入れ替えが行われれるそう。10段階の8から9へは成績次第で誰でも昇格(?)できるらしい・・・ 松永さんとも一応仲良くやっていたので少し惜しいが、9には入らせてもらうぞ!
因みに、運動のC組への編入は本来筋肉が定着する三ヶ月後らしいが、そんな悠長なことを言っていられないという俺と久松、先輩の三人は前科もないため、一ヶ月後の試験の結果如何では認められるらしい。・・・そう、俺は早いとこA組?にいかなければならない。そうでなければ深琴君を守れるようになれないから!!
痛み的、肉体的余裕ができてきた俺は運動の30分の延長を申し出て、それに乗っかった久松と二人、果てしない後悔と共に坂本担任に呆れられながら風呂場に連行された。
「あまり焦って無茶するなよ。まだ時間はある、休息日は必ず守ることを決して忘れるな。」
まだ足湯を使っていた先輩と中野に労われながら五分程度浸かり、早々に部屋へ引き上げた。
精神的にも余裕ができてきた俺は再び家事を分担し始め、美琴君の勉強もぬかりなく進められている。驚いたか!もう中三に入ったのだ。もうすぐ高校の範囲に進むことになるけど・・・少し教えられるか不安。
「雅都さん、あの・・・僕が邪魔になったら、ちゃんと言ってください。無理だけは、絶対しないで。」
びっくり・・・まさか、そんなことを言われるとは。
「俺、離す気無いって言ったよ。そのために、今もこうしてるんだから。身勝手な押し付けなんだから、西條君は気にしちゃだめだ。逆に辛いこととか、したいこととかあったら、ちゃんと言うんだから。いい?俺は、自分のしたいことしてる。だから、ね。」
初めて前髪が邪魔だと思った。空間としての隔たりくらい減らしてやりたいって。だから、思い切って、・・・てできるほどの勇気はまだなく、軽い頭突きだけに留めた。
「雅都さん 、前言撤回です。そばにいてください。そのために、がんばって。」
この言葉ほど嬉しいものはない。俺は力強く頷いて、笑ってみせた。
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