2.初めての夜
さて、深琴君に勉強教えているうちに、夜になった。食材は近隣からヘリで調達しているらしく、なかなかものがいい。しかも!調理が必須のものは無料から普通の半値というお得さ。二人分だから、さらにお得。一応立っていた店番の強面のおっさんに断りを入れて持ち帰る。
これすごいなと思うんだけど、まだ一度も寮とかで同年代に会ってない。時間がずれているんだろうね。と言っても午後六時、学校遅くなるとそれくらいか。
ご飯食べ、風呂に入って愕然。深琴君が敷いてくれた布団・・・俺寝るとこない。
「何してるんです。あ、でもお風呂上がりすぐに就寝は良くないといいますから、本、読んでください。」
恥ずかしげに俯いて頬を赤らめる少年。もう、なんでしょうこの愛くるしい生き物は。
「ええと、それじゃあ、ナルニアとかにする?あ、それともファーブルの方がいい?」
訳がいいと定評のあるものを指すと、迷った挙句ナルニアになった。
「これ映画化もされたんだよね。見たことある?」
表紙を見ながら首を振る男の子。隣に胡座をかいたニートっぽい俺は、訳の妙なところは適当に変えながら読んでいく。ハードカバーの読み聞かせ・・・微妙な違和感はあるが、楽しそうだから良しとしよう。
「浪花さんは小さい頃、どんな本が好きだったんですか?」
「俺は・・・・・なんか面白半分に近現代の文を読まされたのが印象的だった。ただ、お気に入りは黒と青と白以外ほとんどない絵の、昔話だったな。趣味悪いって言われたけど。」
小さく笑う少年の体温が近くにあって、仄かに赤くなっている薄い瞼が徐々に閉じられていく。俺は頃合いを見計らって電気を消し、彼の隣に転がった。初の添い寝は心地よく、窓の外の星が濃くなりだしたときには眠っていた。もちろん五時のアラームは忘れずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます