8.道中
久々の新幹線。別に鈍行でよかったんだが、そうは言えなくなってしまったのだ。自業自得だけど。
二人がけの指定席、隣には・・・大きめの、行李。人一人入るくらいの。
犯罪の匂いがしますが、持ち歩くとき以外は固定用のテープは外しております。もちろん、拘束なんてしてませんよ。
さて、なぜこんなことになったかといえば、時は二、三日前の午前中に遡る。
簡単なIQテスト的な学力試験を受け終え、仕方なしに荷造りをしていた俺は、昔自分が着ていた冬物を見出した。ちょうど西條君も着られるくらいの。
実はそれより前に一緒に来てくれとお願いしたんだが、冬に着る服がないからと一蹴。で、なにかもう一つや 二つ理由があるのだろうと感づいた俺は諦めた。
が、それを発見した瞬間、俺は気づいた。彼は方向音痴で非常な出不精。食べ物の貯蓄にしても、勉強にしても、追われている可能性という事実にしても、このマンションの、中程度のセキュリティ(このおかげで鮒羽を含むいじめっ子どもに踏み込まれたこはない)にしても、長時間一人にするのは危険。
「ということなんだけど。」
「僕を誰だと思っているんですか。その気になれば、隣のおばさんに言って買い物とかついてってもらえばいいし。」
「正直言うとね、知らないおじさんについて行っちゃいそうでお兄さん怖いんだよ。」
「そんなことっ・・・わかりました。その代わり道中は、これで。」
と、押入れから適当に引っ張り出してあった5つの行李のひとつを指さされたわけでした。前科があるって怖い!
でも話すことなどもちろんできずに、たまに行李をつついて安全を確認しているというわけ。田園風景の続く車窓を一緒に覗くというのは見果てぬ夢というわけでした。
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