7.勇者かな?

幸せは突然に、か。うまくできた料理を美味しいと言ってくれる子がいる。最初はあまりの少食に不安になったりもしていたが、子どもだからこれくらいが普通なのだと主張していた。

そして、今お湯が沸くのを待つ間に眠ってしまった男の子が、隣で寝息を立てている。

欲が出たのだ。はじめて俺が得た人だから。ずっとこうしていたいと思ってしまう。どこまでも甘やかしたくなる。

そうは言っても、小学校の勉強はなんとかしなければいけないだろう。

切り紙被害を受けたのは小三のと中一、高一のだけだから、それも買い直しているから、ちょっと汚れてたりはするが全て揃っている。一応出して置いたけど、さすがに開いた形跡はない。

・・・それにしても愛らしい寝顔。あ、勘違いしないでくれ。添い寝なんかさせてない。俺は小学校で使った寝袋で休息をとっている。だからこそこの寝顔はレアなのだ。

長い睫毛、まだ幼い口元、小さいが鼻筋の通った鼻、それらが卵型の頭の中に綺麗にバランスよく収まっている。

「西條君・・・勝手に手の届かないところになんか、行くなよ。」

小さい頭が俺の手の中に収まってしまう。俺の天然パーマ?とは違って天使の輪ができている細いしなやかな髪。 ずっと撫でていたい。

「浪花さん、そういうの、起きている人に絶対言っちゃだめでなことですよ。」

「人が悪いよ。狸寝入り?」

「・・・あの、ごめんなさい。実は僕・・・その・・・」

この子がこんな風に言い澱むのは珍しい。

「いえ。それより、一週間後に入学する学校。なぜ入られたか気にならないんですか?」

「・・・気を悪くするなよ?西條君の家、お金持ちそうだから、その伝手かな・・・とか。ほら、選ばれたものしか入られないって噂だし。」

「なるほど。あたらからずも遠からずといったところですね。確かにここまで早急に勧められたのは家のおかげですが、それより・・・あなたが浪花さんだからですよ。」

「そんなに珍しい苗字でもないでしょ。」

「違います。雅都さんが特別だっただけです。家系的な問題で。」

なんの話?俺の体に紋章でもあるわけ?

「怪我の治り、早いでしょう。精神的な状態にかなり左右されるとは聞きますが、普通の人の三分の一くらいの時間で完治するとか。」

「・・・ごめん。あんまり意識したことないや。一ヶ月が十日になってもあんまり変わらない気がしちゃうんだよね。」

呆れたようにため息を吐かれてしまった。

「あのですね、一瞬で治るとか、数分で心臓完治とかいうのを想像するのは阿呆です。そんなのファンタジーですよ。あなた、変わらないとか言いますけど十分おかしいんです。再生能力が異常に高い細胞、研究対象にだってなりかねない。・・・紹介した学院は、そんなちょっと周りと違う人が集まるんです。だからこそ、機密も保たれる。」

・・・つまり、たとえば滞空時間が人の数倍だったりとか、手を擦っていると少し火が出るとか、そんな感じだろうか。

「家のことは、僕に任せてくださいね。ちゃんと僕、待ってますから。」

「え?」

「あれ、言ってませんでした?霜月学院は全寮制です。」

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