6.逃避、逃避!

俺は逃げた。誰から?もちろん鮒羽から。西條君からなわけないでしょ?超絶ストイックと噂される、ほぼ伝説化している筋肉学校に二学期も入ろうと思ってしまうくらい大切なんだから。

あ、ちなみにさっきのは俗称ね。それくらいキツイって話だけど、お偉いさんのボディーガードを輩出してきた有名な学校だ・・・が、どこにあるかは伏せられ、入られるのは選ばれたものだけ・・・俺は勇者か!

そこはかなり入学卒業がルーズな上、今通っている学校そのままで通うことができるというお得さ。

さて、なぜ 俺の思考が乱れているかというと、目の前の答案。

・・・愛人発言というダイナマイトをくらった頭で受けた数学君、死す。

「あ、くるくるお化けだー。うわぁ、菌がうつりそー。きもい。」

この酷い人は中村君。そんな近づいたら浪花新型ウイルスに感染するぞ。

「おい、なんでお前の机なんも入ってないわけ?面白くないんだけどぉー。」

いじめの中心人物花岡さん。ほとんど男子と言葉遣いが変わらない女の子。それでも性懲りも無く色々机に入れちゃってくれるんだからいいじゃないか。

「あれ、オカマじゃん。おまえ鮒羽にやられたって噂になってるぜ。」

火のないところに煙は立たぬと言いますからね。佐倉君の情報は正しいですが、断じて俺はオカマではない。ゲイまたは・・・ショタコンの線は濃厚になってきましたが。

「え、うそぉ、ちょっとそれ逆にショックなんだけど。鮒羽ってそっちの人だったの?」

「な訳ないでしょ花岡。このお化けを体良く使っただけでしょ。」

うわあ、その言い方はないよ中村君。

でも俺が嫌なのは周りの連中だ。見て見ぬ振りはまあわかる。怖いよね。きっと俺でもそうしてしまう。罪悪感持ちそうなのも彼らだ。同罪って意識は結構ありそう。

あとあからさまに笑っている連中。これもストレス発散にはなるんだろう。リスクを背負う気がない卑怯者とは思うけど。でも君らは完全な同罪だ。頭の中では主犯格と一緒に 処刑されていると思った方がいい。

一番嫌なのは、哀れみの目を向けてくるやつらだ。同情するなら助けてくれ。金はいらん。しかもそいつら、裏では陰口の仲間入りしてたりする。正真正銘の黒幕のくせに、絶対何があっても罪悪感なんか抱かない。

「なあ、男に抱かれた感想は?」

悪夢以外何があるんだ? 恐怖以外に何を言えと?ふざけるな。

それよりなにより、鮒羽の足音だ。俺にはわかる。もう今日の授業は終わっている。逃げよう・・・どこから?もちろん、窓以外に選択肢はない。人よりでかいんだ。二階から飛び降りたって少しは違うだろう。そして今日こそはトンズラしてやる。あれから一週間なんとかぎりぎりで逃げてきた。そして、あとはこの業を三回繰り返せば一学期は終わり。筋肉へ入学だ。

「お、おい浪花?」

俺の席は窓際から二列目の真ん中。だけどいじめ連中がいるのは廊下側。

「ちょっと待っ・・・」

最後に聞こえたのはたぶん花岡。もしこれが飛び降りを前提とするなら、俺の名を呼んだ佐倉と最後の花岡は、その原因を作った自覚あるのだろう。

しかーし残念、華麗に着地。やればできる子・・・・マジでできた。すごい俺!いや、まて。ガッツポーズより先に逃げよう。

それにしても、どこから湧いて出たんだあの自信。骨折とか捻挫とか考えもしなかった。「身長180センチ」の威力か。さて、今日はパスタとデザート作ってやろう。


(※良い子は絶対に真似しないでください。 )

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