第2話 悪魔
────断ったはずなのに。
学生証も止めろと言ったのに。
「なぜ毎日落としているんだ!」
こうなったのは1話の続きのせいである。
「同人誌の挿絵を描いてください」
「同人誌⋯⋯?」
「はい。いつも"エロい"絵を描いてますよね?"エロい"絵を」
若干、エロいを強調してる気がするのはなんだろう⋯⋯
「いや、描いているけど⋯⋯」
「やっぱりさつきさんじゃないですか!」
しまった。口を滑らせた。
「でも、描かないよ?」
「なんでですか!?」
「周りにバレたくないし」
「爺」
「例のものですね。ただいまお持ちします」
10分後、
「それでは説明致します」
さつき先生には地下で"エロい"絵を描いていただきます。
そして、お嬢の同人誌のイラストレーターとして一緒に活動していただきます。
「貴方は、私の家の中で働いてお金を貰える。しかも、貴方の大好きな"エロい"絵を描くだけで良いの」
そして、周りにはただのお友達とだけ言っておけばバレることはございません。
以上でございます。
「"エロい"絵を描く気になった?」
「なるか!なぜエロいを強調するんだよ!バカなのか?エロい絵を描くやつは、エロいを強調されたくないんだよ!」
まぁ、俺の場合だけどな。エロい絵を描いていて中学時代に色々とあったから、嫌なんだよな⋯⋯
「お願い! 一緒に作りましょ!」
「嫌です! 失礼します!」
そして、家を出た。
それからも学生証で永遠に誘ってきやがる。
今日こそは────
「絶対に断ってやる!」
「何言ってんの?」
「え? 遥輝? なんでこんな所に?」
「君が騒いでたから、来てあげたんじゃないか。」
「そ、そうだったの。すまん、なんでもない。」
「ふぅーん、彼女のことが気になるんだ?」
「あんな悪魔、誰が好きになるか!?」
「でも、顔は天使だよねぇ?」
「そういや、女子ってこの学校に居るのか?」
「なんで?」
「柊木って奴いるか?」
「いるんじゃないの?学生証あるし。」
「一応、確認出来ないか?」
「え~。めんどくさ⋯⋯」
ジーっと彼の目を見つめる
「わ、分かったよ。兄貴に聞くからちょっと待って」
彼の兄は、何故か学校の副校長なのである。しかも学生主事。
この学校に在籍している学生なのかはすぐに調べられる。
「あ、もしもし? 兄貴?」
電話が終わるまで、夕日を眺めていた。
「えっとね⋯⋯同じ経営母体ではあるみたい」
「じゃあ、違う学校なのか?」
「そうと言えばそうなんだけど、同じといえば同じみたいな⋯⋯」
「ごめん、柊木さんがどんな人なのかだけ教えてくれ」
「この学校の経営母体の理事長の娘さん」
「ん?もう1回、ゆっくり」
「この学校の、経営母体の、理事長の、娘さん」
「つまり・・・?」
「1番偉い人のお嬢さんってこと」
「は、はぁ・・・」
1番偉い人のお嬢さん・・・
「え!?マジで!?」
「本当」
「お前、冷静すぎないか?」
「お前が慌てすぎなんだよ」
「いや、だってこの前⋯⋯」
あいつの願いを断っちゃったし。(第1話参照)
「この前⋯⋯?」
「いや、なんでもない! ありがとう!」
俺は全力で彼女の家まで走る。
路地の角で誰かとぶつかった。
「痛⋯⋯ッ」
目の前を見ると、お嬢様学校の⋯⋯いや、俺と同じ学校の制服を着ていた。
「あら?大丈夫です⋯⋯」
────何かあったのか?
「⋯⋯あの? ⋯⋯何か?」
「胸、触りましたよね⋯⋯?」
何故そうなる? このタイミングでそうなるやつは居ないだろ⋯⋯
「いや、そんなわけない!」
絶対だ。俺は後ろに手をついて転んだのだ。
「この、変態!」
「待て! 誤解だ!」
「誤解な訳ありません!」
俺は彼女から逃げることになった。
そして、20分も走り続けた。
────体力ありすぎだろ。
「うちの前で何をしていらっしゃるのかしら?」
「柊木様!?」「柊木!」
「⋯⋯近所迷惑になりますので、とりあえずうちに上がってください」
暖かい紅茶まで出してくれた。
「で?何があったのかしら?
「えっと、このおと⋯⋯男性が私のむ⋯⋯胸を触ったのです。」
「弁解はありますか?」
「全部誤解だ!」
「弁解はないようなので、全てあなたが悪いのですね。じゃあ、罰として私の文芸部に入って同人誌で"エロい"絵を描いて下さい」
「なんで、エロい絵限定なんだ!?」
本当に勘弁して欲しい。
「悪魔ちゃんはマンガね♪」
「んな!?こんなやつ⋯⋯こんなクz⋯⋯低種族のやつ⋯⋯男性と同人誌を描くのですか!?」
ちゃっかりクズって言いそうになってるんだよな⋯⋯
「文句はないわよね⋯⋯?」
待って、怖いわ。この人。権利悪用してるわ。
「はい⋯⋯。」
「君は?」
ニッコリと微笑む彼女だが、目が怖すぎる。
「⋯⋯はい。」
そして俺は今1番気になっていたことを聞いた。
「悪魔って?」
「彼女の本名よ」
「お前の名前、悪魔って言うのか!?」
「そ、そうよ!悪い!?」
「だーかーらー!」
「柊木さん⋯⋯?」「柊木様⋯⋯」
「近所迷惑って何回言えばわかるの~!!」
「いや、広いから大丈夫だろ」
「あ、そっか」
このお嬢様は自分の家が広いことを納得しちゃうのに、今まで理解してなかったことを俺は理解した。
そして、これ以外にもとんでもない非常識発言をこれからしていくのだろうと思った。
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