第13話テスト返却です!
今は夜中。自分の部屋で布団に入りながら、考え事をしている最中です。
テストも終わり、図書委員という役員にも就いて、この一週間はその後も平穏に終わりました。
勉強も今のところついて行けるし、なんとかなりそう。
家で、予習と復習をしっかりとしているというのが勉強でついて行けている理由だと思います。
勉強は問題ありません。勉強は。
問題は友達が少ないことです。
勿論、咲良ちゃんや山田君に何ら不満があるわけじゃないです!
二人とも時間は短いですが、大事な友達ですし、けんかをしたわけでもありません。
そもそも小学校の六年間で友達が一人も出来ていなかったことを考えると、一週間で二人も出来ちゃうなんて、まるで夢でも見ているか、奇跡でも起きているようです。
でも、人間って不思議な物で、一人出来ると、二人。二人出来ると四人、友達が欲しくなるみたいです。
クラスメイトのみんなと友達になりたいな、と思い始めている自分に気づきました。
でもそんなことを思っているのに自分からは話しかけられず、相手が話してくれるのを
待つ、受け身の姿勢で、友達なんて出来ません。
来週からは自分から頑張って話しかけられますようにと、誰にでもなく祈って、私は眠りにつくのでした。
そして次の日、朝起きてから思い出したのですが、今日はテストの返却日です。
テストが始まる前は、名前が掲示される自信がなかったのですが、テストが終わった今は、テスト上位陣として名前が載るかもと、少しだけ期待しています。
学校に着いて、本を読んでいると、咲良ちゃんが青い顔になりながら教室に入ってきたのを横目で確認しました。咲良ちゃんは自分の席に鞄とコートを置くと、一直線に私の所まで来ます。
何でそんな顔色悪いんだろう?もしかしてテストの返却かな?でも先週はテストの結果が成績に関係ないって聞いたら顔色良くなってたから、テストは咲良ちゃんが顔色悪い原因に関係ない気がするんだけど。
「どうしたの?咲良ちゃん。」
私はしおりを本に挟んで本を閉じて、咲良ちゃんに顔を合わせて、そう聞きます。
「結衣―。テストって順位貼り出されるらしいよ。知ってた?」
知ってたら、もっと、ちゃんと勉強したのにー!と、声を荒らげてそういう咲良ちゃん。
なるほど・・・。テストの順位が貼り出されることを知らなかったから、こんなにナーバスになっているんですね。
プリントにそのことを書いてあったのに知らないのは、前回、先生の話を聞かないでテストあることを知らなかった前科があるので、まだ理解できます。
ですけど、この様子だと、テストの結果が貼り出されるのは各教科と総合上位30名だけっていうことは知らなそうです。
また友達に教えてもらったのかな。
少し気になって咲良ちゃんに聞いてみます。
「どうやってそのこと知ったの?」
「ん?今日友達に教えてもらったんだけど。どうして?」
「うーん。ちょっと気になったから!それって、この前テストあるのを教えてくれた友達?」
「うん。」
「そうなんだ。ありがとう、ちょっと気になっただけだから!何でもないよ!」
顔と両手をブンブンと振りながら、咲良ちゃんにそう告げる私。
これは私の勘なんですが、その友達ちょっとイジワルな子かもしれません。だって、テストの日は、テストがあることは教えているのに、テストが成績に関係ないことは告げず。
今回はテスト結果が掲示されることは教えても、テスト結果が掲示されるのが上位陣のみって事は咲良ちゃんには告げていないんですから。
咲良ちゃんと一緒で、そのことだけ知らなかった可能性もあり得ますが、そんな偶然、二回も続くでしょうか。
でも、今までの話を聞いてきた感じだと、仲が悪いわけではなさそうですし、人の友達の事にまで、あれこれ言うのもダメですよね。
せめて、テストの結果は上位陣しか掲示されないことだけでも説明しないと。
「あ、あの咲良ちゃん。テストの結果は確かに掲示されるけど、それは各教科30番以上の人だけだよ。」
その言葉を聞くと、咲良ちゃんは水を得た魚のように生き生きとして、
「そうなの!?いやー。だったら安心だわ。学校中に私の点数をばらされるなんてまっぴらごめんだもん!」
と、言いました。
「結衣はさー。そんなに落ち着いてるけど。もしかして、勉強出来る感じ?出来る感じですかー?」
このこのー。と、私のほっぺをツンツンしながら、にやにやした顔で私にそう言ってくる咲良ちゃん。
「えっと!?その、あの、掲示されるかはわかんないけど、でも、以外とテストは出来たかも・・・」
最後は尻すぼみになってしまいましたが、そう伝えました。
そうしたら、咲良ちゃんは目を見開いて驚いている様子。
「なーにー。結衣、勉強出来る子か!すごいじゃん!私、勉強出来ないからさー。」
ハッハッハ。と胸を張って笑いながら私にそう言ってくれる、咲良ちゃん。
褒めてくれるのはうれしいですけど、勉強出来ないのはちょっと問題ですからね!?
それは口には出さずに、その後も咲良ちゃんと時間までお話をしていました。
その後、一時間目が始まり、国語のテスト返却がありました。
出席番号順に名前を呼ばれて、テスト返却をされています。
「山田太郎くん」
「本当の名前は悠久なる闇(エターナルファントム)だが、まぁいい。受け取ってやろう。」
そう言って、髪をかき上げる仕草をして、先生の所へ行き、テストをもらう山田君。
始めの真名についての部分は誰にも聞こえないような小声で言っていましたが、私は聴力がいいので聞き取れてしまいました。
本当は聴力がいいと言うより、超能力で聞きたい方向の音を拾いやすくしているのではないかと思っています。普通の人もそういう体の能力があるようですが、両親と、比較した結果、私のそれは普通の人の物よりも強力で、遙かに小さい音でも、聞き取りたいと思ったら、ハッキリと聞こえるようになります。
自分でも無意識で使ってしまう超能力の一つなので、超能力を使わないように生活していても使わずに生活できない、制御できない超能力の一つです。
この間は自分の真名を人に聞かせたらまずいって言ってたのに、小声とは言え自分でまた言っちゃうなんて、山田君大丈夫かな。
「笹森結衣さん」
「は、はい!」
国語の担当先生から名前を呼ばれたので、気持ち急ぎながら先生の元へ向かい、テストをもらいに行きます。
「よく頑張りましたね。」
「あ、ありがとうございます!」
先生にお辞儀をしながら、テストをもらい、自分の席に戻ってからテストの点数を確認します。
98点!
やった!本当は声に出して喜びたかったのですが、大勢の人がいる中でそんなこと出来ません。
その後も、テストの返却は続いて、それが終わると、通常の授業が始まりました。
授業が終わると、咲良ちゃんが私の席まで来て、テスト見せ合いっこしよ!と言ってきました。自分の点数が高くて、咲良ちゃんの点数があまり良くなさそうなのを知っているだけに、少し気後れしてしまいましたが、嫌だというのはもっと咲良ちゃんにも悪いので、素直に、いいよ。といってお互いのテストを交換し合いました。
「ゆ、ゆ、ゆい。あ、あんた。ほ、本当に頭がいいやつじゃん。」
「ど、動揺しすぎだよ。咲良ちゃん。」
咲良ちゃんのあまりの動揺ぶりに自分も動揺してしまいました。
咲良ちゃんのテストの点数を見ようとすると、咲良ちゃんは私の手から、彼女自身のテストをもぎ取って自分の胸の前に隠してしまいました。
「結衣に馬鹿にされるから、見せるのやだ!」
「そ、そんなことしないよ!私も見せたんだから咲良ちゃんのテストも見せてよぉ!」
「いやだ!絶対見せない!」
「そんなぁ。」
初めのうちはそう言っていた咲良ちゃんですが、私が必死に説得すると渋々見せてくれました。
「ぜーったい馬鹿にしないでね!」
38点
ぎりぎり赤点は回避している様ですが、あまり良い点数とは言えません。
これはどう反応したら良いのでしょうか。咲良ちゃんに傷がつかないように励まさないと!
彼女は私の初めての友達ですから!
「あ、あの咲良ちゃん・・・。」
「ん?なに?」
「勉強、一緒に頑張ろうね!」
なるべく自分のなかでは明るく言ったつもりです。咲良ちゃんは、感激した様子で、
「ありがと!結衣!」
と抱きついてきました。
「く、苦しいです・・・。」
その後のテスト返却では、数学で100点。英語で94点。理科が95点。社会が98点で、すべての教科が自分の想像以上に高い得点でした。
そのたびに咲良ちゃんは、やば、とか、すご、とか、数学が100点なのを見たときには、あんた化けもんじゃん!など色々褒めて(?)くれました。
そんな咲良ちゃんは、数学で23点。英語で87点。理科が40点。社会が37点を取っていました。
数学が赤点で、これはまずいよ!と二人で言い合い、英語が他の教科に比べて高いので、私は驚きました。英語を見せるときだけは、咲良ちゃんは自信ありげに見せてきて、私、英語教室に通ってたから、英語は出来るんだ!と言っていました。
そう言っていた咲良ちゃんも、私が英語教室に通っていないのに、私の方が点数が高かったのを知ると、呻きながら私の事をにらんできましたけど。勿論、本気でにらんできたわけではないと思います。・・・本気じゃないですよね?
こうして、テスト返却と、学校が終わりました。順位発表は、今日のテスト返却であった採点ミスを反映するために、明日以降に発表されるそうです。
今日、松村先生から言われて初めて気づいた事があったのですが、私はてっきり、テストの順位は上位陣しか分からないと思ったのですが、掲示はされないだけで、個人的に各教科の得点と、順位と、標準偏差が書かれた紙をもらえるそうです。
標準偏差がどういう物かは分かりませんが、先生によると、平均が50で、50を超えると、平均よりは頭が良いそうです。各教科によって平均点のばらつきがあるから、それをなるべく公平にして自分の実力をわかりやすくするために、云々と松村先生は言っていましたが、一回の説明では理解できませんでした。
そんな恐ろしい事が書いてある紙を見せたら、親にめちゃくちゃ叱られるよ!と言っている咲良ちゃんと、下校の時間になって、廊下で話していると、山田君がこっちに向かってきて、
「おい、同胞よ。聖戦(テスト)の結果はどうだったのだ?」
と、聞いてきたのでした。
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