第11話 初めてのテストです!
※人によっては百合と感じる描写があります。ご注意ください。
身体測定を終わらせた次の日、今日は小学校での学びを確認する、成績には影響しないと松村先生は言っていましたが、中学校で初めてのテストの日です。国語・数学・英語・理科・社会の順番で、五時間授業の予定となっています。
勉強は苦手じゃないけど、小学校とは違って中学校では、テストの順位を各教科上位30番まで貼り出されるとプリントに書いてあり、貼り出されたら恥ずかしいなと思う反面、貼り出されないのも嫌だなと、贅沢な心配をしてしまいます。
そんな心配をする必要もない可能性の方が高いとは思いますが、だって一年生全員で、一クラス32名×6クラスで192名。その中の上位30名なんてとてもじゃないけど入れる自信はありません。
学校に着いて少しすると、咲良ちゃんが教室に入ってきました。何か顔色が悪いような・・・
「おはよう結衣―。今日テストだってー。さっき友達に聞いたんだけどさ、私、勉強出来ないから。不安で仕方ないよ。」
私の席の真ん前まで来て、両手を机にのせてしゃがみ込んで、自身の不安を吐露してくる咲良ちゃんですが・・・その・・・
昨日松村先生テストって言ってたのに、聞いてなかったの!?
口にこそ出しませんでしたが、顔には驚いた表情が出ていたと思います。
咲良ちゃんはそんな私の様子を見て自分と同じだと思ったのでしょうか、
「もしかして結衣も今知った感じ?やばいよねー。学校始まって三日目でテストなんてさ。この学校おかしいよ。」と、仲間を見つけたためか顔色を良くしてニコニコしたと思ったら、次には怒った顔で私に言ってきます。
どうしましょう。これは話を合わせた方がいいですよね。
「う、うん。そうだね。」
多少ぎこちない態度だったでしょうが、私はそう返事をしました。私は昨日の段階で知っていましたし、松村先生が難しいテストじゃないから緊張しなくても大丈夫。といっていたのをちゃんと聞いていたので咲良ちゃんほど不安はありません。
「でもそんな不安にならなくても大丈夫じゃないかな。成績には関係ないし、難しいテストじゃないって聞いたよ。」
私がそう言ったのを聞いた咲良ちゃんは本当の意味で安堵した様子で、
「なーんだ、そうなんだ。じゃぁ心配する必要なかったじゃん。何よ。あいつのやつ。脅かして、信じちゃったじゃん。」と言いました。
おそらく、さっき、咲良ちゃんにテストがあることを教えてくれた友達に対して恨み節をぶつけていました。
そうして咲良ちゃんとくだらない話をしていると、登校時間ぎりぎりに山田君が教室に入ってきたのを確認しました。
山田君とは話す時間がなさそうです。
山田君はテストがあるって知ってるのかな?知ってるといいけど・・・。
勝手ながら私が山田君の身を案じていると、松村先生が教室に入ってきて、前言ってた様に今日はテストやるからな。と発言した後、朝の学活を始めました。
朝の学活も終わり、少し時間が経った後、松本先生ではない先生が、今から国語のテストをやるぞー。とハリがない声を出しながら、テスト用紙を持って教室に入ってきました。
テスト用紙が配られ、チャイムと同時にテストが始まります。
問題を一瞥すると、解けない問題ではない印象を受けました。
こうしてテストを終わらせて、見直しをかけたところミスもなく、問題自体は一応、全部解けて、分からない問題はありませんでした。
テストが終わるまで問題用紙に絵を描いて時間をつぶして、一時間目は終わりました。
二時間目は数学の時間です。こちらも同じように問題を解き、見直しと絵を描いて時間をつぶします。
三時間目、四時間目も一時間目、二時間目と同じように見直しと絵を描いて時間をつぶして過ごし、あっという間に午前の授業は終わりました。
今日は初めての給食が出る日です。四人一グループで席を作って、合計八グループで給食を取ります。
今は、先日学活内で決められた班が、給食の配膳を行っています。
私が入っている班は今週、何もなし。来週からクラス掃除当番。その再来週は給食配膳。その次の週は特別教室掃除と、一週間交替で当番を決められています。
目の前にはいつも隣の席に座っている男の子のクラスメイト、隣には普段私の前に座っている女の子のクラスメイトがいます。
誰も何も話さない状態で、誰かが話しかけるのを待っている感じです。
ど、どうしましょう・・・何か話さなきゃ!でも何を話せばいいの。クラスで咲良ちゃんと山田君としか話したことないのに・・・。
何か話さなきゃという焦りと、話す話題が出てこないという自分の無力さを感じていると、隣の女の子のクラスメイトが話しかけてきてくれました。
「あのー。笹森さんだよね?テスト出来た?」
「えっ!?は、はい。できまし・・・。」
急に話しかけられたものだから、すっとんきょんな声を発してしまいました。さらに緊張して声が尻すぼみになってしまいましたし、最後まで聞こえてなかったんじゃないでしょうか。
その証拠に、相手の子は、あ、うん。そうだね。と、全然合っていない返事を返してくれて、話が完全に止まってしまいました。
その後も四人の中であまり話は盛り上がらずに、給食の時間が終わってしまい、昼休みの時間になりました。
その時間になった瞬間、咲良ちゃんが、うわー。結衣―。と叫びながら駆け寄って来たかと思うと、突然抱きついてきました。
「えぇぇ!?ちょ、ちょっと咲良ちゃん!?どうしたの!?」
咲良ちゃんの力は意外と強くて、抱きつかれた手をはがそうとしても、全然はがれません。
咲良ちゃんって柑橘系のいいにおいがするんだなぁ。と無意識に一瞬思ってしまいました。
同性に抱きつかれたのは初めての経験で、びっくりしてしまいました。
あ、勿論、異性に抱きつかれた経験があるという意味ではありません!
咲良ちゃんは私より身長が高いので、咲良ちゃんの体に手を回すと、手が咲良ちゃんの腰の部分に当たります。って何で私、手を回してるんですか!
慌てて手を離すと、咲良ちゃんも私から手を離してくれて、咲良ちゃんと私が向かい合う形になりました。
「結衣―。どうしよう。テスト全然わかんなかったよー。」
咲良ちゃんは泣きそうな、焦ったような顔をしています。
朝はテスト成績に関係ないって言ったら安心してたじゃないですか!
もしかして彼女の予想以上に出来なかったのでしょうか?
彼女の様子に不安になり、私は咲良ちゃんに伝えます。
「だ、大丈夫だよ。成績には関係ないし!」
咲良ちゃんを元気づけようと、自分の中では最大級に頑張って咲良ちゃんを鼓舞します。鼓舞になっていないような気もしますが、色々と咲良ちゃんと会話して、最終的に元気になってくれたので良かったです。
「ありがと結衣。ちょっと不安になっちゃってさ。」
そう言って微かに笑みを浮かべて、咲良ちゃんは自分の席に帰っていきました。
その後すぐ、昼休みは終わってしまい、五時間目のテストが始まりました。
最後まで問題を解いて解答用紙に空白がないことを確認すると、次に書き間違いが内かどうかを確認します。これが最後のテストなので、特に入念にやりました。といっても社会なので三回見直しをしても、尚時間が余ってしまい、結局絵を描いて時間をつぶすことにしました。
こうして五時間目のテストも終わり、すべてのテストが終わりました。
中学校生活最初のテストがすべて終わったことで、クラス全体がどこかホッとしたような空気を漂わせている中、松村先生が返ってきて帰りの学活を始めました。
松村先生によると、テストが返ってくるのは来週だそうです。
テスト、手応えがありましたし、返ってくるのが楽しみになってきたかもしれません!
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