第10話 山田さんの能力って?
こうして私とファントムさんは同じ超能力者同士友達になれてとてもうれしい気分なのですが、私はファントムさんに一つ聞きたいことがあります。
「あの、ファントムさん。」
「うん?なんだ?」
「あのファントムさんってどんな力を使えるんですか?この間の自己紹介の話を聞くに私よりも強い能力者な気がしますけど。」
「そうなのか?まぁ、私の力は強すぎて非常事態以外使えないからな。攻撃的なものしかないから今ここで見せることは出来ないな。それがたとえお前のような同胞であってもだ。すまない。」
やっぱりファントムさんの超能力は私よりもずっと強いようです。あまりの能力の強さに非常事態以外には使用も出来ないと言っていますし。
私がそうなんですね。と頷ずいていると、ファントムさんのほうから話しかけてくれました。
「そういうお前はどんな能力を使えるんだ?」
「えーっと。私ですか?ファントムさんに比べたらたいしたことないですよ!せいぜい物を浮かせたり出来る程度ですし。ファントムさんの方がすごいです!」
「そうなのか。お前の能力はどちらかと言えば日常生活に役立ちそうだな。」
「確かに日常生活には役立つ物が多いですが、なるべく使わないようにしているんです。」
そうしないと、色々と大変な事になるので。そこまでは口に出しませんでしたが、同じ超能力者のファントムさんなら分かってくれると思います。
「なるほどな。理由はなんとなく分かるから言わないでもよい。それにしても、同じ存在といっても持っている能力は全然違うな。そういうのがお前は好みなのか。」
好み?ファントムさんは一体何の事を言っているのでしょうか。私には話の脈絡が全くつかめず聞き返すことにしました。
「好みですか?何の事ですか?」
ファントムさんはそれに答えずに笑みを浮かべて、「ほう!そうか!お前はそこまで徹底するのか。これは私も負けてはいられないな。」と私に言うのでした。
私がそれに対しても聞き返そうとすると、ファントムさんは私の方へと歩き出して来ます。私は反射的に身をかがめてしまいましたが、ファントムさんはそんな私のことを抜き去っていきます。
私が目をファントムさんの方へ向けるとファントムさんは屋上の出口へと進んでおり、私に向かって、「おい何をしている。そろそろ時間だぞ。教室に戻ろうではないか。」とそう言うのでした。
私とファントムさんが二人で教室へ向かって歩いて行くとファントムさんは不思議な顔をして私に話しかけて来ました。
「そういえばお前はどこのクラスにいるんだ?」
「えっ?私ですか。ファントムさんと同じクラスですよ!」
もしかして知らなかったのでしょうか。そうなるとファントムさんはクラスメイトだと知らない人と話していたことになりますが・・・。
ファントムさんって肝が据わっている方なのでしょうか。
「そうなのか。すまないな。盟友達のことはまだよく分かっていなくてな。悪気があって言った訳ではないのだ。許してくれ。」
「さっきから言っている盟友達って言うのはクラスメイトって言う意味ですか。そもそも怒ってなんかいないから大丈夫ですよ。ファントムさん。」
あれだけ話していたのに、クラスメイトだと知らなかったなんて。私だけ何か思い違いをしていた気分になって、少しだけ悲しい気持ちになりましたけど。ファントムさんは悪気があったわけではないのが分かっているだけになんとも言えません。
「そうか。それは良かった。盟友達は確かにクラスメイトともいうな。それと私の事を真名で呼ぶときは完全に二人っきりの時にしてくれるとありがたい。」
今も二人っきりじゃないですか。とそう思いましたが、今は教室に向かって廊下を歩いている途中、人は誰もいないとはいえ、万が一誰かに聞かれる可能性があるために言ったと思っていいでしょう。
「じゃぁ、今は山田君って呼びますね。」
そう言うと、私の予想は合っていたようで、山田君は笑顔で頷くと、 ああ、ありがたい。と言うのでした。
そうして教室に着くと、周りからすごい視線を感じます。なんだか教室もぴたっと静まってしまいましたし。
席に座ってすぐ身体測定をする時間が来てしまい、クラスのみんなで席を立って、計測場所である体育館に男女一列ずつで移動します。
移動の時に咲良ちゃんに興奮した様子で話しかけられました。
「ちょっと!ちょっと!結衣。あんた山田と一緒に教室に入ってきたよね。何してたの!?変なことされてない?」
「えっ?ちょっと咲良ちゃん!そんな体ペタペタさわらないでー。」
咲良ちゃんは私の体を、ペットをかわいがる時みたいな手つきで触ってきます。くすぐったいし、何よりクラスのみんなに注目されたらと思うと、恥ずかしくて赤面してしまっています。
山田君と、超能力者同士で話していましたなんて正直に言えるはずがないし、なんて説明しよう・・・。友達になったことぐらいは言ってもいいかな・・・。
「うーんとね、咲良ちゃん。私、山田君と友達になったの。」
咲良ちゃんはそれを聞いて有り得ないことでも聞いた様に目を見開いて、私の事を触れるのをやめて言います。
「嘘でしょ!何何々!山田に弱みでも握られたわけ!山田だよ!あの山田だよ!」
「なんでそんなに興奮してるの!?山田君ってそんな変かな?ちょっと言葉が独特な時はあるけど、普通の人だよ?」
「いやー。それはないわ。山田が普通って。」
そう言うと咲良ちゃんは吹き出して、「やっぱり結衣って面白い性格してるよね。」って言ってくれるのでした。
体育館に着きました。体育館では身長測定器と体重測定器が三つずつ置いてあり、クラスメイト各々好きなところに並んで測定をする様です。
身長伸びてるといいな。勿論体重は増えてませんように!
私は昔から身長が低いのが悩みで、毎日牛乳を飲んでいるのにちっとも身長が伸びてくれません。去年測ったときは139.7cmで140cmの壁を超えれなかったので、今年こそは超えていたらいいなぁと思っています。
身長と体重を測り終えて教室に戻ってきました。
私は満足な気持ちで教室に戻って来ました。なんと140cmの壁を乗り越えたんです!140.2cm。これは私の歴史に残る出来事と言っても過言ではないでしょう。
うきうきな気分のまま、松村先生が帰りの学活を始めて、そしてそのまま帰宅号令が出されました。
早くお母さんにも伝えてあげなくちゃ。
私はなるべく帰宅を急ぐ為に、早足で帰るのでした。
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