第8話 山田さんという超能力者

 「お前が選ばれし人間か。待っていたぞ。我が運命の戦友(フェイトメイト)よ。」


 私の事を選ばれし人間と呼ぶのは、私が超能力者であることを暗に伝えているのでしょうか。でもフェイトメイトというのは意味が分かりません。


 「あ、あの山田さん!」


 私が山田さんに話しかけようとすると山田さんはそれを遮って話し始めます。


 「いや、何も言わなくていい。私にはすべてが見えている。お前が同じ力を持つ仲間を探しているのだとな。」


 私の心臓は一際大きく鼓動をしました。


 私が何を考えているのか見透かされてる・・・!やっぱり山田さんは超能力者なんだ!


 「はい。そうなんです!私、今まで同じような力を持つ人に会ったことがなくて・・・」


 山田さんは神妙な顔つきで私の言葉にうなずくと、「そうだろうな。この世で選ばれた人間というのは極めて少ない。私とお前が会えたことはまさに奇跡のよう・・・いや必然だ。この広い世界の中で同じような力を持つものがこうして巡り合えるのは必然以外の何物でもない。」と言ってくれました。


 私が山田さんと会うことになるのは偶然ではなくて必然だったのでしょうか。

 

 私がそれについて考えていると、山田さんはしみじみとつぶやき始めます。

 

「それにしても、まさかお前が選ばれしものだったとは、少々驚いた。人は見かけによらないものだな。」


 「え?はい。確かに私の見た目は山田さんと違って悪いですけど・・・」


 山田さんは私より20cmぐらい高いのではないでしょうか。私は140cmよりぎりぎり高いぐらいですが、山田さんは160cmを越している気がします。顔も男らしくきりっとした顔立ちをしていますし。若干の釣り目もきりっとした顔立ちによく似合っています。短めの髪もよく似合っています。

 それに比べて私は小さい体におかっぱ頭で、顔も幼い顔立ちをしているので、とても中学生には見えません。

 

「・・・いや、そういうことではないのだが。まぁいい。」


 「あの、山田さん。」


 「ファントムでいい。ファントムと呼べ。私たちは運命の戦友だからな。遠慮する必要はない。」


 「わ、わかりました。ファントムさん。どうして屋上に?」


 どうして山田さんがファントムと自称するのかはわかりませんが、本人が良いなら私もそう呼ばせてもらうことにします。そして、屋上にいたのが不思議だったのでそのことも聞いてみました。


 「なに?お前は何も感じなかったのか?そうか。お前の力はその程度ということか。屋上であれほど強い反応があったというのに。」

 

 強い反応なんて私は一切感じませんでしたが、私より強い超能力者のファントムさんが何か感じたというのなら、屋上で何かがあったんでしょうか。ほんとはわかっていませんが、生まれて初めて出会った、自分以外の超能力者に失望されるのは絶対に嫌です。


 「い、いえ。私もちゃんと気づいていましたよ!だから屋上に来たんです!」


 「そうか、わかっていたか。やはりお前は私のフェイトメイトだな。」

 

そういうとファントムさんはニカッと歯を見せて笑います。ただ、とファントムさんは続けて、

 「その、なんだ・・・ファントムと呼ぶのは二人きりの時だけにしてくれないか?それ以外の時は山田でいい。」


 「別にかまいませんが、どうしてですか?」


 「・・・私の真名が悠久なる闇(エターナルファントム)というのはもう知っていると思うが、真名には力が宿っているからな、力の使い方を知らない一般人に呼ばれて、真名に込められている力が暴走するかもしれないから教えたくないのだ。」


 「でも、昨日の自己紹介で思いっきり、真名っていうんですか?それクラスの皆さんに言ってませんでした?」


 私がファントムさんの真名を知ったのもそれが原因ですし。と付け加えて言うと、ファントムさんは黙ってしまいました。少したって、ファントムさんは言います。


  「まぁ、真名の力による力の暴走はめったに起こることはないからな。つい口を滑らせてしまったのだ。」


 「なるほど。そういう理由なのですね。わかりました。普段は山田さんとお呼びしますね。」


 本当は少し釈然としませんでしたが、ファントムさんに嫌われたくないのでうなずくことにしました。


 「山田でいい。わざわざ“さん”をつける必要はない。」


 「いえ、でも、私、男の子を呼び捨てにしたことなくて、少し恥ずかしいです。」


 「・・・そうか。なら君呼びならどうだ?私もさんづけされるよりよほど良い。」


 私はコクコクとうなずいて、

 「わかりました。では、山田君って呼びますね。」と笑いながらファントムさんに言うと、山田君は少し驚いた顔をして、「あぁ、よろしく頼む。」と、そういうのでした。


 こうして私は生まれて初めて自分以外の超能力者の友達ができたのでした。

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