第7話 山田さんを見つけました!

 学活も終わり身体測定の時間が来ました。クラスごとに分かれて順々に違う測定をするようで、身長体重を計測したり、視力検査をしたり、聴力検査をしたり。様々な検査を半日でやるようです。


「じゃぁ、先生は検査をする側に回るから、自分たちでしっかり並んで時間に遅れないように検査すること。健康調査票を今から一人一人に配るから。それを持って検査に向かうこと。先生は体育館で身長を測る係だから、なんかあったらそこまで来ること。」


松村先生はそう言って一人一人に健康調査票を配っていきます。


「女子は女子更衣室で、男子は男子更衣室で着替えて教室に戻ってくること。」


私たちのクラスは視力検査、聴力検査、身長体重測定の順番で行いますが、クラスごとに検査する時間が決まっているので、早く終わっても教室に戻って待たなければいけないようです。


山田さんを誘うチャンスはその時にある気がします。





・・・そう思っていたのですが、視力検査の時も聴力検査の時も、山田さんは私より先に検査を終わらせた後、教室に戻らずに、フラリとその姿を消してしまいます。そして次の検査が始まる時間になるといつの間にか教室に戻ってきているのです。


確かに教室に戻らないクラスメイトもいるけど、毎回毎回教室に戻らないなんて。

どこにいるの?山田さん。


私が使える超能力の瞬間移動(テレポーテーション)でも使って家にでも帰っているのでしょうか。いえ、私より強力な超能力者の山田さんなら私の知らない超能力を使っている可能性も十二分に考えられます。


人の居場所が分かる超能力なんて使えないし、どうしようかと悩んでいたらトイレに行きたくなってきました。


次の検査まではまだ時間があるから、今のうちに行ってこようかな。


そう思ってトイレへ向かう途中、山田さんらしき後ろ姿を確認しました。


あ、山田さんだ!そう思った時には曲がり角を曲がって姿が見えなくなりました。


今、追わないと今日はもうチャンスがない気がします。私はそう思って、山田さんを追うことにしました。


廊下を走るわけにはいかないので、先生に見られても怒られないように小走りで追います。曲がり角を曲がると、その先に階段を上がっていく山田さんが見えました。でもここは四階なのに・・・その上は屋上しかなかったはずです。


一年生は四階、二年生は三階、三年生は二階に教室があります。


特に屋上に何かがあるとは思いませんし、何のために屋上へ?そもそも屋上は扉に鍵がかかっていて入れないんじゃ。


まだ入学して一日しか立っていないのでこの学校についてはよく知りませんが、少なくとも通っていた小学校では鍵がかかっていたので中学校でもかかっていると私は思います。


 階段を上がるとそこに山田さんはいなくて目の前には屋上へとつながる扉がありました。

鍵がかかっている様子はありません。


 鍵を開ける超能力を使ったのでしょうか。


 やっぱり山田さんは超能力者なんだ!そう思って扉を開けると山田さんは後ろを向いて空を見上げていました。


 「あ、あの、山田さん!」


 私がそう呼びかけると山田さんは手を広げながらゆっくりとこちらを振り向いて、

「お前が選ばれし人間か。待っていたぞ。我が運命の戦友(フェートメイト)よ。」

と、そう私に告げるのでした。

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