第6話 話し合いをしましょう!

 もしかして咲良ちゃんに私が超能力者だとばれてしまったのでしょうか!?


 本人に確認してもどうにかなる問題ではありませんし、もし仮に何か他のことでつぶやいていたとすると自分から墓穴を掘ることになります。でも十中八九超能力者だとばれたと思います。だってそれ以外に私を見て、なるほどなってつぶやく理由が私には思いつきません!


 ここはリスクを負ってでも他の誰にも教えないようにお願いしないと!


 私は咲良ちゃんの席に行って咲良ちゃんに話しかけます。


 「ね、ねぇ咲良ちゃん。」


 「ん?なに?」


 「あ、あの話したいことあるから、ちょっとこっち来てください!」


 そう言って私は咲良ちゃんの腕の部分のブレザーの端っこをつかんで少し無理矢理になりますが教室の外へ連れて行きます。


 「え、ちょっとなになになに!?って、いがいと力つよっ!」


 学校でひとけのなさそうなところに咲良ちゃんを連れて行き、覚悟を決めて話しかけます。


 「あの、さっきのことなんですが。」


 「ん?さっき?」


 「さっき私トイレに行ってそれで。」


 「あー。なるほどそのことね。それで?それがどうかしたの?」


 「そのこと誰にも言わないで欲しいんです!」

 「うーん。そんなに秘密にすることでもないと思うけど・・・?」


 いやいやいや、咲良ちゃん!?何を考えてるの!?


 思わずそう口に出そうになってしまいましたが、あまりにも予想外の返事に逆に頭が冷静になりました。


 もしかして私が超能力者だと気づいていない?いやでもだったらさっきの、なるほどね。はどういう意味で言ったの?


 「確かに。」

と咲良ちゃんは言葉を続けます。

 「トイレにジャージ袋を忘れて取りに行くのはちょっと恥ずかしいかもしれないけど、そんなに気にするほどじゃないよ!


 「へ?」


 「ん?」


 「あ、あぁ。ううん。何でもないです。そうですね!そんなに気にするほどでもなかったかもしれません!」


 「そうだよ!最初にトイレ行ったときにはジャージの入った袋なんて持ってなかったのに、帰ってきたときには手に持ってたからトイレに忘れてきたんだなって思って。でもそんなこと本人に言うのもあれでしょ?だから言わないでおいたの。」


 なるほど!そう勘違いしていたんですね。確かに超能力の存在を知らないのに超能力を使ったなんてそもそも思いつきもしないに決まっています。咲良ちゃんが折角そう勘違いしているのならそれを押し通すことにしましょう。


 「あ、そうだったんですね。気を遣っていただいたのにわざわざ呼び出したりして、ごめんなさい。」


 「いやいや、気にしないで。そんなことより結衣って意外と力強いんだね。そっちの方がびっくりしちゃったかも。」


 「え?うん。たまに言われるかも・・・」


 ・・・本当は私、力は全然強くないです。むしろ他の人よりもずっと弱いです。でも焦ったり驚いたりしたときに無意識に超能力を使ってしまうことがあるので、今回もおそらく念力サイコキネシスを無意識下に使ってしまったんだと思います。


 「まぁ、うん。さっきのことは誰にも言わないから安心していいよ。じゃあ戻ろっか。」


 そう言って咲良ちゃんはにこりと笑ってくれました。その笑顔はすごくかわいくて、女の私でも頬を赤らめてしまうような、そんな笑顔でした。


 そうして二人で教室に戻ろうとすると教室から音が全く聞こえません。


 どうしたんでしょう?


 咲良ちゃんと二人で首をかしげながら教室に入ります。


 どうしたの。と咲良ちゃんが、近くにいたクラスメイトに聞いています。あの子はきっと咲良ちゃんの友達なんだろうな・・・私もあの子と友達になれるかな。


 「あぁ、咲良。いや、山田が入ってきたから。なんか雰囲気悪くなっちゃって。」


 「あー。山田ね。確かに独特の雰囲気持ってるよね。」


 どうやら山田さんが原因でクラスが静まったようです。また超能力を使ったのでしょうか。これはあくまで私の勘なのですが超能力は使っていない気がします。


 「もう朝の学活始まる時間だから私、席に戻りますね。」


 「りょうかーい。」


 どうやって山田さんと話す機会を設ければいいでしょうか。さっき咲良ちゃんにやったみたいにひとけのない場所に呼ぶのがいいのでしょうけど、さっきのように教室で誘ったら目立ってしまいます。


 今日は身体測定だから呼ぶ機会はたくさんあるかな。


 とりあえず今は朝の学活を待とう。

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