⑨ 少女の正体

「……失せろ。もはや貴様に用はない」


 呆れた口調で、少女は言った。


「貴様がおぞましいということは、よく分かった。この儂をして鳥肌が立つほどに気持ち悪い。一刻も早くここから失せろ。ここは貴様のような人間が、いつまでも居ていい場所ではない」


 散々な言われっぷりだが、その通りだと思ったので何も言い返さなかった。

 彼女の言う通り。

 ここは、いつまでも私がいていい場所じゃない。


 だから彼女の言う通り、一刻も早くこの場から失せるとしよう――

 と、その前に。


 一つだけ、訊き残したことがある。


「貴女は結局、何だったの?」


 最強の屍を造りだせると豪語する少女。

 スカートタイプの喪服姿がよく似合う、甲高い声の少女。


 一体どういう理由で私に声を掛けたのか、どうしてこんな場所にいるのか、どうして現実離れしたスキルを発揮できるのか――結局のところ、最後までそれは分からなかった。


「ふん。別に今さら、語るような存在でもあるまいよ。――そうさな、敢えて貴様の言葉を借りて言うのなら」


 少女は一息ついて、どうでもよさそうに言った。


「全くもって、ロマンチックじゃない存在といったところじゃ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る