私と生活
朝、起床してからすぐさまテレビをつけた。音量を少しだけあげて、キッチンまで音が聞こえるぐらいにする。
両親はとっくにゾンビと化しているので、朝食は毎朝自分で作らないといけない。両親がゾンビになってしまってからというもの、国からの援助はあるものの、生活のすべてを自分一人でやらなくてはいけないので。親がほとんどやってくれていたことは意外と多いのだと気づかされる。ゾンビになってしまうからいけないのだ。
適当にパンと卵を焼く。マグカップに水を入れて、レンジでチン。そしてそのお湯の中に、インスタントのスープの素をぶち込む。簡単だがそこそこおなかの膨れる食事ができた。
リビングのテレビの音量を通常まで下げて、テーブルに食事を並べる。
「「いただきます」」
声が二重に響く。
向かいで堂々と食べているのは、国から派遣された殺戮兵器、通称“カミサマ”。この殺戮兵器は半分は人間でできているらしく、食事や睡眠といったものが必要とされるらしい。(もう半分は機械でできている)本人から話を聞けば、元人間だったらしく、死にかけていたところを国に引き取られ改造されたらしい。どこぞの特撮ものかな?非人道的なことも国がやれば、もみ消されるし誤魔化されるのか。こわいなー。
元人間なら朝食くらい作れ、と言ったが、やらせてみると電気製品というものをことごとく壊してくれたので、キッチンにすら立たせていない。役立たず、と罵らなかった私を褒めてほしい(実際のところ憔悴しきっていたので何を言う気にもならなかったのだが)。ちなみに、切るぐらいならと思って、包丁を渡したが、一振りであらぬ方向へと包丁が飛び突き刺さるという事件があったので、もういろいろと諦めている。
「ごちそうさまでした。おいしかった」
「………お粗末様」
きちんと礼は言うし、食事に対しても毎回感想も言うので。それだけで充分かとも思う。それと皿洗いぐらいはできるので、それで相殺という形に落ち着いている。こいつがなんか文句言い出したら別だけどね!
×××
さて、外を出たらサバイバルの始まりだ。
春らしく桜が咲いている。ひらひらと舞う桜は美しい、青い空によく映える、が。その下ではゾンビが宴会を開いているのだ。何匹かは桜の枝をゆさゆっさと揺らしている。あー、しんでも害悪かよ。
「桜の木まで伐採したくないから、カミサマは手ぇ出さないでよね」
「わかってるよ」
「それならよし」
カミサマは離れた場所で待機。私一人でゾンビの群れを排除する。スイカ割りみたいに撃ち抜いてく。あれに使うのはバットだし、例えにもなってないんだけど、シューティングゲームっていうには違う気がするし。だってあれはゲームだしこれは生きるか死ぬかって感じだから。スイカ割りがサバイバルかって?しらない。
「はい、おわり~!」
「ここのは、な」
「はいそこ嫌なこと言わない~!」
あったかくなってきたせいか、頭おかしいのが増えていて、いつもより通学路を進むのが大変だった。どこからわいてるのこれ。こんな田舎なのにまだ人がいたのか、とか唐突な疑問がわきながらも、とにかく撃ち抜いた。学校にたどり着くまでにかなりの運動を強いられた……。もしかしたらこれでカロリー消費できたかもしんない。ダイエットに最適………でも、お断りだわ!楽して痩せたい!
「無理だぞ」
「声出てた!?」
ばっちり、と言うカミサマはあきれた表情を浮かべている。
「まだまだ青春は遠そうだな」
「遠くない!」
脊髄反射で否定した私を誰が責められよう。と思っていたら、朝からうるさいと先生から責められた、即落ちかよ。
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