鴉の心、斯く乱る 壱
「んん?!
「おやおや、
「いやだって、おかしい……おかしいですよ、何度
不正だ不正だ、と言いながら半信半疑の
「でも待って玄梅くん。逆に私がいくら振っても一しか出ないのもおかしいから」
「確かに。ではこれが
何を隠そう、彼らは今、軟禁されている状態である。
とにかく、そうしてできた不思議な状況である。
いい加減、何の喜びも見出せない双六遊びに飽きたのか、日和が
「ねぇ、紅緒、聞いてもいいかな。
国家の
「あれは、私が詠んだものではなく、
意味もなく双六の駒を積み上げていた巳珂は流し目で自らの主を
巳珂は、にぃ、と大きめの口の
「その通りだ、あれは俺の
「滅茶苦茶役立たずよの」
紅緒以外の全員が息を詰めた。この女は越えてはいけない一線を、鼻歌まじりに
「まぁ、聞きなさい。俺は神祖の力は失ったが、この身体は神祖の力の行使に耐え得る身体のままなのだよ。神とも、
「つまり、
「紅緒っ」
にこにこと言い放った紅緒を、冷や汗をかいた玄梅が小声で
「すまぬ、
「お前、
「信仰?」
まるで初めて聞いた言葉かのように繰り返す紅緒の眉が、珍しく
「そうだ、信仰だ。俺の存在を信じ、
それは……大いに
ほんの少し自慢げに胸を張っている巳珂を見つめる玄梅の
「そこのお前、今かなり無礼なことを考えただろう」
普通に国家の危機、と心の中で呟き額にまで汗を浮かばせた玄梅は、巳珂のじっとりとした
「どおりで、
にこにこといつもの笑みを浮かべた紅緒が言い終わらぬうちに、
「貴様……!
全員が動けないでいる。否、巳珂については
「その、怒りに燃える
日和が固まっていた首をぎしりと
「鴉近様、鴉近様、大丈夫です。彼は私の身随神ゆえ、私の信仰しか受け付けませぬ。そうであろ、巳珂」
毛ほども力を緩めることなく、鴉近が巳珂を
「そのとおりだ。俺はそもそも、身随神の契約などという
「だとしても、貴様がこれと手を組んで良からぬことを企てない保証にはならない」
むしろ深くなった眉間の
「わかります。私ほど信用に足らない怪しい人間はそうそうおりませぬゆえ。しかし、今言えることは、この者は私が身随神になってほしいと頼んだ時、
最後ににっこり笑ってあっけらかんとして言う紅緒。「天地がひっくり返ってもは言い過ぎでは?」と巳珂が
「……口では、何とでも言える」
「だからといって、紅緒が死ぬまでそうしているつもりか」
「はいはいはいはい、やめやめ。お前ら、今日はこれ以上面倒事を起こさんでくれ」
うんざりしたような声を上げたのは、いつの間にか司琅の隣に立っていた宇賀地である。綺麗に
「とりあえず、紅緒以外は帰ってもいい。当然、今日のことは全て
司琅にもうしばらく紅緒を見ておくように言って、宇賀地は
「紅緒、大丈夫ですか?」
鴉近が出て行ってから
「いやー、驚きましたね。
常に何かに
「それよりも、さっきのは紅緒の印象良かったんじゃないですか。こう、びしっと助けに入って……」
にやついた
「兄上?」
「……紅緒は」
「はい」
「……ときどき
たっぷりと考えた後に、
「紅緒と少し話がある。
不意にそんなことを言い出した氷雨に、日和は意外そうな目を向けてから短く返事をし、玄梅を紅緒から引き
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